月宮よしと「蜘蛛女」(200円)



「文治年間(1185〜1190)、丹波国桑田郡に鷲尾十郎左ェ門義治という豪族があった。
 ある日、彼は四人の野盗を捕まえる。彼らは、尾長蛙(尻尾のある蛙)の干物を合印としていた。
 野党の一人、蝦蟇丸は、海賊の頭だった祖父を持つ、力量に優れ、武芸に達した強者であり、祖父の仇の義治を討とうとして、館の状況を窺っていた時、捕らえられる。
 数日後、彼は仲間を絞め殺し、牢から逃走する。
 時は流れ、建久二年(1191年)の春、義治の妻、蜘蛛手の方は、モズが偶然に落とした、尾長蛙の干物を目にして、妙案を思い付く。
 それは殿の寵愛を奪った玉琴への復讐であった。
 彼女は、家来の兵藤太を使い、義治の妾、玉琴を誘拐させ、現場に、尾長蛙の干物を落とし、盗賊の仕業に見せかける。
 そして、蜘蛛手の方は、玉琴が出産間近の身であるにもかかわらず、毒蜘蛛に襲わせて、殺し、その後、顔の皮を剥いで、谷川に死骸を捨てさせる。
 全ては蜘蛛手の方の思惑通りに進み、翌年、彼女は桜姫を出産。
 十六年の時が流れて、承元元年(1207年)、美しく育った桜姫に、いろいろな所から婚姻の話が舞い込む。
 姫に結婚を申し込んだ、富豪の武士、信田平太夫は、手ひどく断られたのに立腹し、義治の城に攻め込む。
 同じ夜、蝦蟇丸は、城内に忍び込み義治を殺害。
 殿を失った城は落ち、桜姫はわずかな手勢を連れて京都へと逃げ込む。
 そこで、彼女は、清玄という若い僧侶に一目惚れし、恋煩いに陥る。
 姫のために、一行は、清玄が住職として赴任した寺へと向かうが、途中で賊に襲われ、桜姫は囚われの身となる。
 この盗賊の頭は蝦蟇丸で、彼の妻に、桜姫の母、蜘蛛手の方がおさまっていた。
 蜘蛛手の方は落城の後、荒野をさまよっていた時、偶然、蝦蟇丸に出会い、急場をしのぐため、彼の妻となったのである。
 桜姫が蝦蟇丸の妾にされると聞いた蜘蛛手の方は、嫉妬に狂い、実の娘とは知らないまま、桜姫を襲い、殺してしまう。
 桜姫の死体は、清玄の寺へと送られるが、そこで桜姫は息を吹き返す。
 一方、蜘蛛手の方は、蝦蟇丸が夫の仇であることを知り、絶体絶命の大ピンチ。
 そこへ、清玄が駆けつけ、蝦蟇丸は転落死し、母子は涙の再会をする。
 その後、母子は信田平太夫を討ち、鷲尾家の再興を図ろうとする。
 蜘蛛手の方は清玄に桜姫の夫となるよう懇願するが、彼の出生には秘密があった…」

 恐らく、原作があるのでしょうが、怒涛の展開でぐいぐい読ませます。
 もちろん、最後には、大量の毒蜘蛛に襲われる描写もあり、期待を裏切ることはありません。
 全体的な怪奇色は薄いとは思いますが、当時の貸本漫画としてはかなりの出来だと思います。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。切れのテープ補修幾つもあり。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。

2020年11月11日 ページ作成・執筆

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