佐藤よしろう「餓死」(220円)



「黒勝寺での十年の修行を終え、僧となった男。
 彼が仏の道に入ったのは、戦死した三十二人の部下の復讐をするためであった。
 1944年、グアム島の更に南にあるメレヨン島。
 本土決戦に備えるため、七千の守備隊が送られる。
 だが、一週間後の爆撃で、大半の食料を失う。
 焼け残りの食料は将校達が管理し、下士官達は食料を現地調達する命令が出るものの、島は農業には向いておらず、結局、トカゲやネズミといった小動物を捕まえるしかない。
 下士官達は餓死するか、アメーバ赤痢でどんどん死んでいき、主人公(名前なし)が班長を務める305部隊も、彼を含めてわずか五人となる。
 そんな絶望的な状況の中、主人公は指導力を発揮して、生き延びる道を模索する。
 しかし、部下の一人が将校が管理する食料を盗んだことから、彼は「するめ干の刑」(日差しの下、両手を立木にくくられて、脱水死させる刑)にされる。
 死にかけていたところを、将校に片腕を試し斬りにされるが、かろうじて生き延び、その場から脱出。
 死肉にたかるカニを食べ、彼はどうにか部下のもとに戻るのだが…」

 この作品は太平洋戦争中、南方の島での飢餓地獄を描いたものです。
 とは言え、大岡昇平「野火」のような、カニバリズム描写もありません。
 それでも、「死体にたかるウジを集めて、料理する」描写や、「死体にカニがびっしりたかる」描写があったりして、なかなか頑張っております。
 ぶっちゃけ、怪奇マンガとは口が裂けても言えませんが、ここまで凄惨な描写があると、紹介せずにはいられませんでした。

 ちなみに、この作品は二部構成で、後半は「屍の復讐」です。
 「屍の復讐」では、主人公の将校達への復讐がメインのドラマとなっております。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕とスタンプあり。

2019年4月23・24日 ページ作成・執筆
 

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