さがみゆき「眼中の妖女」(220円)



「その昔、阿国歌舞伎の中でも第一の舞の名手と言われた浮舟という女性がいた。
 何故か人前では決してその能面を取ることはなかった。
 ある城の若君の前で舞を踊った際に、その若君に能面を取って、顔を見せて欲しいと言われる。
 この能面は醜い容貌を隠すためのものと断るものの、若君の恋人である蓉が面を取ることを強要する。
 やむを得ず、能面を外した浮舟は非常に美しい少女であった。
 浮舟に一目惚れした若君は、夜な夜な城外で浮舟と逢瀬を重ねるようになり、二人は互いに愛し合うようになる。
 このことを知った蓉は嫉妬し、浮舟と若君の仲を壊そうと企てる。
 ある夜、蓉は醜い仮面で浮舟と偽って出会い、若君は腰を抜かさんばかりにしてその場から逃げ出す。
 そして、浮舟を人気のない場所に連れ出すと、特別仕立ての面の内側に針がついた能面を浮舟の顔に無理矢理に被せる。
 血を滴らせながら、浮舟は発狂、井戸に身を投げてしまうのであった。
 そして、現代。
 しばしば城跡に現れる、美しい少女。
 どこの誰かもわからない。また、口がきけず、皆から気狂い扱いされていた。
 ある月夜、その少女を目にした敏也は彼女に昔会ったことがあるような気がしてならず、少女に接近する…」

 粗筋だけ読めば、純愛もののようですが、後半には蘇生の儀式や復讐といった要素が盛り込まれ、やっぱりバッド・テイストであります。
 かつ、マリオ・バーバ監督の名作「血塗られた墓標」(1961年/イタリア)の要素があるのも嬉しいところ。
 そして、浮舟の亡霊と敏也の間を乱舞する、手描きのハートマークの群れ!!(う〜ん、ラブリ〜)
 ほっこりしますね。

 本編後の「漫画教室 中等科」において、「太陽プロ第二回絵画研究会」についての記事があります。
 太陽プロの面々だけでなく、小島剛夕先生のアシスタントの西村つや子先生も参加されたとのことです。
 熱気は伝わってきますが、後に皆、理想では食べていけないということを散々思い知らされたことを思うと、空しくなってくるのです…。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。下部に目立つシミ、幾ページかあり(pp54・55、ちょっとひどい)。
 ちなみに、乱丁があるみたいです。
「p55→p61→p55・56→p62・63・64→p57・58・59→p65・66→p60→p67→p70→p68・69→p71」だと推測します。
 間違っていたら、ごめんなさい。

平成27年11月16日 ページ作成・執筆

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