森由岐子「お化け寺の美女」(220円)



 収録作品

・「お化け寺の美女」
「画家志望の青年は、展覧会に出す絵の題材を求めて、ある田舎村を訪ねる。
 彼の眼を惹いたのは、荒れ果てた寺であった。
 そこで、彼は着物姿の美しい娘と出会う。
 彼が声をかけると、娘は顔をそむけて、寺の中に駆け込んでしまった。
 彼が寺を出ると、通りすがりの老人が彼に話しかけてくる。
 老人の話によると、この寺はお化け寺と呼ばれ、鬼女が住みついているという噂があるらしい。
 そうは聞いても、先程の女性が鬼女とは到底思えず、青年は寺のスケッチを始める。
 だが、夕立に遭い、慌ててとび込んだ寺の中で、あの娘と再会する。
 婆やは二人のために座を外し、青年と娘は古ぼけた寺で二人きり。
 雨はやむ気配がなく、激しい雷雨となり、青年は寺で夜を明かすこととなるのだが…。
 鬼女と噂される、少女の秘密とは…?」

・「海と少女と僕」
「小豆島。
 泳ぎの得意な少年、譲は、浜辺で可愛い少女と出会う。
 美智子という名の少女は毎日、浜辺で泳ぐ少年達を見に来ていた。
 彼女は海は好きだが、心臓病のために、泳ぐことができないと譲に話す。
 譲は美智子に、身体が丈夫になったら、泳ぎを教えると約束するのだが…」

 偏った紹介のために「イロモノ」扱いされがちな森由岐子先生の作品ですが、基本は「純愛もの」だと私は思います。
 ここで扱う「お化け寺の美女」は、その特徴が最もストレートに出ておりましょう。
 両作品とも、怪奇色は非常に薄いのですが、語り口は完成されており、読ませます。

 ただ、個人的にこの作品で一番興味深かったのは、ストーリーの最中に唐突に挿入される「ちょっとお休み」のページ。
 このページで森先生は「私の一番尊敬するさし絵画家の石原豪人先生」の絵を何でもいいから送ってほしいと読者にお願いしております。
 い、石原豪人先生!!…し、渋〜ッ!!
 あの当時から大ファンなんて、もしかしたら、森由岐子先生はかなりの鑑識眼の持ち主なのではないでしょうか?
 こんなところに、半世紀以上も漫画家として活躍してきた秘訣があるのかもしれません。(なかったら、ごめんね。)
 石原豪人先生はお亡くなりになりましたが、森由岐子先生には「石原豪人スピリット」を胸に燃やして、レディコミ雑誌で旋風を巻き起こして欲しいと私は願っております。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり(頑張って剥がしました…)また、ビニールカバー貼り付けのために、表紙歪み。糸綴じあり。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。

2017年2月16日 ページ作成・執筆


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