三田京子「十六才の昇天」(220円)



「新聞配達をしながら、高校に通う苦学生、深山雪彦。
 ある日、新聞配達の途中、自転車の彼は婦人に衝突、婦人は亡くなってしまう。
 不幸な事故として、周囲からは同情されるものの、雪彦は人を死なせたことに深い衝撃を受ける。
 また、慰謝料のために、雪彦の家は、田畑の大部分を売り払い、一家は逼迫する。
 事件は一件落着はするが、雪彦は罪の意識から逃れることができない。
 そんなある日、彼は、被害者の娘、谷口香織と知り合う。
 彼女は、彼女の母親に持病の心臓病があったにも関わらず、死因を自転車の衝突によるものとして、家族が過剰に慰謝料を要求したことに負い目を持っていた。
 逢瀬を重ねるうちに、香織は彼に対する憎しみが消え、一方の雪彦は、加害者である彼を許し、励ましてくれる彼女に感動し、二人の間には清らかな友情が芽生える。
 だが、同時に、彼女との交際は、死なせてしまった犠牲者を思い出させることとなり、雪彦は苦悩する。
 高校の中退を機に、雪彦は、置手紙を残し、別の地に職を求め、村を出る。
 しばらくの間は、二人は文通していたものの、香織の家族の知るところとなる。
 そこで、香織は貯金をはたいて、雪彦を訪ねることを決意。
 だが、電車の中で置き引きに遭い、一文無しになってしまう。
 更に、香織の父の讒言(ざんげん)により、雪彦は勤め先を首になっており、彼の行方はわからないまま。
 雨の中、行き倒れた香織は、ミラノ教会の神父に助けられる。
 肺炎にかかり、峠は越したものの、香織はひどく衰弱。
 それでも、雪彦の新しい勤め先を聞かされ、香織は彼に会いに出かけようとする。
 しかし、一足遅く、彼は、田舎に帰るために、勤め先を辞めていた。
 香織は彼が故郷への電車に乗っていると考え、その電車に乗り込む。
 そこで、二人は再会を果たすのだが…」

 前作「怪談十五夜の花嫁」の次回予告にて「最近実際におこった実話を基に描かれる感動のドラマ」と紹介されており、その通りの内容です。(本当に実話なのか確認取れておりません。)
 テーマは当時、社会問題となりつつあった「交通事故」で、被害者だけでなく、罪の意識から破滅へと向かう加害者(やっぱり美少年)にフォーカスを当てているところが三田京子先生らしいかもしれません。
 でも、「怪談」と銘打ちながら、ちっとも「怪談」でないのはちょっとね〜。
 罪の意識をシュールに表現した描写(たったの三コマ)や、雪彦と香織が死んで結ばれるラストで「怪談」と言えるかどうか…(無理です)。
 こんなんで読者は納得するのかよ、と思っていましたが、巻末の読者コーナーでは「美男子」がステキ云々といった、少女からのお便りが紹介されており、「美男子」が出てれば万事オーライだった模様です。(注1)
 まあ、私のようなオス族も、大して見所のない作品であっても、琴線に触れるヒロインがいれば、途端に「心の名作」と相成ること多々ですから、あまり人のことは言えません。

・注1
 この点に関しては、唐沢俊一氏・監修「まんがの逆襲 脳みそ直撃!怒涛の貸本怪奇少女マンガの世界」(福武書店/1993年11月10日発行)に触れられております。(p179)
 「まんがの逆襲」は先駆的な書物だったと思うのですが、この著者は飽き症のためか、ブームを起こしても、すぐに先細りになって、廃れてしまう印象を抱いてます。

・備考
 カバー痛み。貸本屋のスタンプ、小口、本文、見開き等、様々な所に押印。p122、p124、後ろの遊び紙、「あ」とボールペンで落書き。

2018年1月10日 ページ作成・執筆

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