西武三郎「宝石少女」(200円)

「K山脈に登山に出かけた四人の男女。
 一条ひろし、彼の婚約者の黛未知、ひろしの親友である牧慎吾、未亡人の紫アキ子。
 テントを張って宿営していると、突然の雷雨に見舞われる。
 すると、外から、テントに落雷があるので、逃げるよう忠告する声が聞こえる。
 四人が外に出ると、テントに雷が直撃。その騒動の最中、四人は足を踏み外して、落ちていく。
 ひろしが気が付くと、ベッドの中で、美しい少女が彼の隣に座っていた。
 今、ひろしがいるのは「不思議な国」であり、美しい少女はこの国で「奈津江さま」と呼ばれ、慕われていた。
 この国は、人間にとっての理想郷であり、戦争も病気もだましあいもなく、愛情とみんなの為の幸せだけがあった。
 住人は永遠に死ぬことなく、ここには死んだはずの歴史上の偉人が永遠の生を保って、今も人々のために奉仕していた。
 この国の守り神は巨大なダイアモンドで、何か災いが起きる時、知らせるのだと言う。
 ひろし達四人は、この国にすぐに慣れ、楽しく暮らすが、現実世界に戻らないといけないという思いがどこか拭えない。
 ひろしと奈津江は互いに心惹かれていくが、これが後に悲劇を起こすこととなる…。」

 西先生の「ユートピア」志向が色濃く出た作品です。
 昔の映画ですが、「ブリガドーン」(1954年/米)ちっくかも。(小学生の頃、NHKで観ただけなので、見当違いの恐れあり。)
「ユートピア」を扱ってはいますが、「たとえ戦争でも人を殺したら、入れない」(わりには、脱獄囚が入り込んでる)といった西先生の信条のせいか、どこかいびつな感があります。
 また、「四次元」や「タイムマシン」といった要素を盛り込んで、なかなか奇妙な味わいであります。
 でも、何よりも胸に迫るのは、若かりし西先生の「初々しさ」でありましょう。
「人形娘」と同じく、ロマンチックな作品であります。とってもいいです。

 ちなみに、ファンの頁(ページ)にイラストを投稿している「川辺富士雄(14歳)」はもしかして「太陽プロ」のあの人…?

備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。本体に少し歪みあり。全体的にシミ多し、また、読み癖あり。後ろの遊び紙欠如。

平成27年10月8日 ページ作成・執筆

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