西武三郎「人形娘」(200円)



「1967年秋、流星のあった夜の翌日。
 画家の卵の一条宏と、シナリオライターである彼の姉、一条空子は、公園で美しい少女に出会う。
 何も言わぬ少女は二人に付いて来てしまい、仕方なく部屋に招き入れるが、少女の突飛な行動に目を丸くするばかり。
 その時、二人の部屋を訪れた、医師の左一角は、この少女に興味を持ち、自身が教育することに決める。
 数十日後、言葉を覚え、宏と空子にもすっかり馴染んだ少女に、空子は「白丘奈津江」という名前を提案する。
 子供のように言葉を覚えたばかりの奈津江は、「人間」とは何か?という疑問を持つ。
 皆と話し合う中で、「人間」にとって「美・愛情・真実」が大切であると、奈津江は知る。
 しかし、ある晩、四人でレストランで食事をしていた時、女優の黛未知と出会って、奈津江の運命は一変する。
 黛未知がアメリカ映画に出演する半年の間、奈津美を代役に最適と考えたのだ。
 奈津美は監督に気に入られ、瞬く間にトップスターへの階段に駆け上がる。
 が、そこで奈津美は、本当の「人間」の姿を見せつけられることとなるのだった。
 そして、黛未知が帰国した時、彼女のいた場所は完全に奈津美に奪われていた。
 黛未知は、奈津美を陥れるために、ある罠を仕掛ける…」

「SFミステリ−」の体裁を取っておりますが、実は「人間の本質」を追求した、いささか精神的な作品であります。
 後記において、西先生は「愛情」が大切と訴えております。
 西先生は、なかなかロマンチストであったのかもしれませんね。
 ちなみに、この作品、東京トップ社から「聖少女の裂けた顔」のタイトルでセルフ・リメイクされております。(注1)
 こちらの方が、大手出版社の雑誌に掲載されただけあって、丁寧に描かれておりますが、個人的には「人形娘」の方が好みです。
 章の扉絵のシュールレアリスムというか、ぶっちゃけトリッピーというか、摩訶不思議な絵柄であります。
 当時としては、かなり先鋭的なマンガであったのではないでしょうか?

・注1
 恐らく、「週刊マーガレット」(集英社)にて「星からきた少女」のタイトルで連載されたのでないかと思います。
 他にも、「墓場からの電話」(単行本では「鬼首屋敷」と改題)、「すすり泣く化石」、「呪いの音楽教室」といった作品がありますが、ちゃんとした確認が取れておりません。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。全体的にシミ多し、また、読み癖あり。pp10・11、pp14・15、下部のコマに、何かが挟まったための剥げあり。pp59・60、上半分にシミ痕あり。巻末に貸出票貼り付け。

2015年10月2日 ページ作成・執筆
2018年4月29日 加筆訂正

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