三田京子「魔性の恋人形」(220円)



「沢谷村に住む人形師、秋山人兵衛の息子、面菊は、大和人形のモデルとなる娘を探すことに執心していた。
 面菊は遠くの村まで足を伸ばし、これと目を付けた娘は必ず家に連れ帰る。
 少女達は、面菊の魔性の美しさ(上右の画像を参照のこと)に魅了され、異様なほどの「女らしさ」に満ち満ちていた。
 しかし、一度、大和人形が完成すれば、娘達は、その懇願も叶わず、秋山家を立ち去らざるを得ない。
 そして、人形のモデルになった娘達は皆、その帰途、不審死を遂げるか、行方不明となる。
 大和人形が完成する度に犠牲者は増え続け、人兵衛は面菊が絡んでいると睨む。
 人兵衛は面菊にこれ以上、モデルの娘を探さないよう命ずるが、大和人形の美しさに憑りつかれた彼は聞く耳を持たない。
 一方、隣の花川村にある尼寺に、白蓮尼という若く美しい尼僧が住んでいた。
 ある夜、読経の最中に、娘達の霊が彼女の前に現れ、早く自分達を捜して、供養するよう乞う。
 白蓮尼は、娘達の霊が、隣村の人形師のモデルになった娘達であることを悟り、翌朝、面菊を探しに出かける。
 面菊が村人から乱暴されているところを白蓮尼はかばうが、彼女と面菊が見つめ合った時、二人の間に電流が走る。
 面菊は白蓮尼に大和人形のモデルになるよう乞うが、白蓮尼は尼の身であることを盾に拒否。
 面菊は、白蓮尼に自分が手彫りした人形を渡して、その場を立ち去る。
 以来、白蓮尼の胸を、面菊への思慕が焦がすようになり、許されない恋であるが故に、苦悩する。
 また、面菊は白蓮尼をどうにかモデルにしようと何度も彼女と逢瀬を重ねるうちに、彼女に対して不思議な感情が芽生えていく。
 こうして二人は密会を重ねていくが、ある日の密会からの帰り道、白蓮尼は、彼女に惚れている船頭の男に秘密を握られてしまう。
 言い寄る男と船上でもみ合ううちに、白蓮尼は船から転落、命は助かったものの、尼寺では謹慎の身の上となる。
 だが、面菊を慕う白蓮尼の魂は就寝中に身体から脱け出し、秋山家の大和人形に憑りつき、面菊と面会する。
 こうして、夜毎、面菊と会う白蓮尼であったが、モデルとなった娘達の霊は彼女の裏切りに嫉妬を憎悪を燃やすのであった…」

 「大和人形」に「尼僧」といったアイテムが出てきまして、故・三田京子先生の旦那さん、松下哲也先生の「怪談人形師」「怪談尼僧ざんげ」との共通項を感じます。
 この作品には「怪談尼僧ざんげ」と同じく、「仏に仕える身でありながら、男に惚れて、懊悩する尼僧」が出てきて、ちょっぴり「生臭」モード。
 こんなドロっとしたストーリーでも、三田京子先生は「純愛」で強引にまとめ上げ、後書きでは、思春期のティーンの妄想のようなことを恥ずかしげもなく書いてます。
 いやはや、この「ピュア」もしくは「一途」(裏を返せば「頑固」かつ「偏執」)なところが三田京子先生の最大の魅力の一つだと私は考えておりますが、皆様はどうお考えでしょうか?
 ちなみに、大和人形のモデルとなった娘達が何故、不審死や失踪したかという件について明確な説明は作中にはありませんでした。
 恐らくは、大和人形に自身の魂と封印されたといった理由でしょうが、そのあたりの説明が片手落ちなのが、惜しいです。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。袖をセロテープで留めてあり、そのシミが遊び紙に滲み、本文にも痕あり。本文、ところどころ、シミあり。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。

2018年1月7日 ページ作成・執筆

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