なぎさ洋「怪談冷凍女中」(220円)



「雪の降る夜。
 御用聞きの平七と部下の八郎太は夜回りの最中、男達が橋上から若い娘を投げ落とそうとする場面に遭遇する。
 男達は逃がすものの、若い娘は無事で、意識を失っている彼女を平七は自分の家へと運ぶ。
 平七の娘、お加代の看病のお陰で、お雪という名の娘はすっかり元気を取り戻す。
 しかし、彼女は自分の身については何も聞かずに、ここに置いて欲しいと懇願。
 平七は何か事情があるのだろうとお雪の頼みを聞く。
 しばらくして、福大屋という店で奇怪な事件が立て続けに起こる。
 最初の犠牲者は、福大屋の女将で、暖かい部屋で、原因不明の凍死。
 二番目の犠牲者は、使用人の忠助で、女将と同様、凍死を遂げていた。
 八郎太は、死んだ忠助があの夜、お雪を川に投げ込もうとした男の一人であることに気付く。
 お雪と福大屋が何か関係があると睨んだ平七が福大屋を訪れると、若旦那の金三が旅行から帰っていた。
 お雪の名を聞くと、金三は顔色を変え、平七が屋敷を辞した後、彼を追い、お雪について問い質す。
 実は、若旦那の金三と、女中のお雪は恋仲であった。
 しかし、二人の仲を快く思わない福大屋の主人は、金三が旅行の間、彼女をある薬品の実験台にする。
 その薬品は「のんだ人間が雪にさわると、ある一定の時間だけその者のふれる物はすべて凍りつく」というものであった。
 事情を悟った金三はお雪を平七に預けるが、お雪は自分が捨てられたと絶望する。
 また、お雪には薬品の副作用が現れようとしていた…」

 インパクトのあるタイトルのみ有名な作品ですが、内容もなかなか良いと思います。
 「冷凍女中」とあるからには当然テーマは「雪女」。
 ただし、薬品によって雪女となったという設定で、「SF」が入っていると言えなくもないところがポイントです。
 これで、如何にもそれっぽいマッド・サイエンティストが出ていれば、個人的な評価はぐんと上がったのですが…。(マッド・サイエンティスト、大好きなんです。)
 絵柄は、なぎら洋先生ですので怪奇マンガに向いているとは思えませんが、捕まった雪女の身体が崩れていく描写はかなり不気味に感じました。(右側の画像を参照のこと/いばら美喜「顔半分」(「別冊・怪奇B」収録)を思い出しました。)
 ストーリーは、雪女の設定はちとキテレツであるものの、全体的な構成はしっかりしていて、純愛ものとしても読ませます。
 もしも読む機会があれば、タイトルからヘンな期待をせずに、読んでいただきたいと思います。
 あと、表紙は、しきはるみ先生によるものです。
 いい仕事、してます。(でも、中の絵は上の画像のような感じです。)

・備考
 デッドストック? 時代を考えたら、美品。

2018年8月20日 ページ作成・執筆

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