望月みさお「水の中の幽霊」(220円)



「四月二十七日、静岡県富士市。(年はわからず)
 ある小学校の五年生徒が岩本山へ遠足に来る。
 その遠足には、小児麻痺で片足が不自由になった福永理恵も参加していた。
 彼女は松葉杖を頼りに、皆に必死に付いて行こうとするが、他の連中はそんな彼女をからかい、嫌がらせをする。
 また、担任の玉井先生は、理恵の障害や、彼女が受けているいじめにさほど関心を払おうとしない。
 皆の嫌がらせに耐えかね、理恵は一人で一人で帰ると山中へ入っていく。
 集合時間となるが、理恵の姿はなく、玉井先生は学校に連絡。
 警察や地元の人達による捜索が行われるものの、理恵の足取りは掴めず、大騒動となる。
 理恵の両親が彼女の身を案じる中、小児麻痺で両足が不自由な妹、悦子は夢で理恵を見る。
 夢の中で、理恵はいじめられていることを嘆きながら、川の中を歩いていた。
 理恵は、何度も悦子の夢に現れるが、いつも川の中へと帰っていく。
 一方、玉井先生や理恵をいじめた生徒達は、理恵が行方不明になった後、罪悪感に苛まされていた。
 そんな彼らの前に、理恵が現れる。
 だが、彼女はもう松葉杖をついていなかった…」

 「実話少女怪談」シリーズの中でも、この作品は本当にあった事件をもとにしたのではないでしょうか?
 ラストはヒロインの遺体が富士川の河口で発見されると言うものですが、ページに本物の新聞記事を使用している気がします。
 でも、ストーリーはもちろん、創作です。
 ストーリーの悲劇性を増すために、ヒロインを障害者にしたように推測しております。
 見所は、水中で、玉井先生がヒロインの幽霊に問い詰められるシーン。
 先生の片足がなくなり、ヒロインの障害がどのようなものか思い知らされるのですが、どことなく薄気味の悪いムードで溢れてます。
 現実にあった事件をベースにしているためか、他の望月みさお作品より、(あの絵を考慮に入れても)全体的にシリアスな印象を受けました。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり(頑張って剥がしました)、また、一部、ビニカバ残り。糸綴じあり。後ろの遊び紙に貸本店のスタンプあり。

2018年8月19日 ページ作成・執筆

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