望月みさお「幽霊のむち」(220円)
「宮本奈々江の父、文吉は酒乱で、ろくでなしのDV男。
そんな男でも奈々枝の母は、病弱な身をおして、甲斐甲斐しく仕えていた。
しかし、文吉の暴力がもとで、母は心臓麻痺を起こして、他界。
母の死をきっかけに、奈々江は変わってしまい、素行は荒れてしまう。
文吉は、奈々江には新しい母親が必要と考え、彼女には一言の相談もなく、後妻を迎える。
後妻となった厚子は、水商売出身であり、心の優しい女性であった。
厚子は、奈々枝と心から心配して接するものの、心の荒んだ奈々江には通じない。
そんな奈々江の前に、母親の亡霊が現れる。
母親の亡霊は、継母の心も知ろうとせず、つらく当たる奈々江に、むちを振るうのであった…」
話だけ読むと、ありふれた昭和の人情話なのであります。
私、おっさんですので、この手の直球の人情話にたやすく「ジ〜ン」ときちゃったりするのですが、この作品、ちっともそういう気配がないのが、逆に凄いと思いました。
やはり原因は、今現在から見ると、かなり「クセ」のある絵柄にあるのでしょう。
望月みさお先生は、かなり昔から「少女マンガ」で活躍されていた方でして、その手の描写が多いのですが、その描写が今となっては「奇異」に感じるのであります。
考えてみますと、当時の「少女マンガ」はいまだ発展期で、様々な漫画家が独自に漫画の表現を探っておりました。
望月みさお先生も「独自」の作風を確立することはしましたが、主流にはなれなかった様子。
理由は、個人的な考えでは、時を超えた「野暮ったさ」にあると思います。
あまりに「洗練」からは程遠い描写が、肝心の御涙頂戴のシーンにやみくもに捩じ込まれる様は、その〜、狙って描けるような代物ではありません。
この点に関しましては、望月みさお先生の作品について書く機会があれば、また考察してみたいと思います。(その頃には多分、忘れてますが…。)
んにしても、あまり感心しないまま、マンガを読み終えて、ここまで考えさせられるのも、凄過ぎる…。
・備考
カバーなし。本体背表紙上部破れあり。pp75・76、コマにかからぬ小さな穴の欠損あり。
2016年9月29日 ページ作成・執筆