望月みさお「呪われた少女」(220円)



「静岡県。
 時枝の母親、たえ子は大の刀マニアであった。
 時枝のことなど放っておいて、日がな一日、刀を眺めてばかり。
 ある日、時枝が母に背後から抱きつこうとした時、あやまって右目付近をばっさり斬られてしまう。
 時枝の傷は重く、醜い傷痕が残ったため、母は彼女を家から出さず、鏡も見せようとはしない。
 窮屈な生活に耐えかね、時枝は顔に包帯を巻き、こっそりと家を出る。
 そして、鏡岩(注1)で自分の顔を目の当たりにした時枝は、放心状態のまま、海に転落、溺死する。
 時枝の死以来、彼女の幽霊は母親の前に現れては、刀だけを愛し、自分を大切にしなかったことを責め苛む。
 更に、時枝の幽霊は、鏡石の付近を美しい女性が通りがかる度に、自分と同じような傷を相手に負わしていく。
 改心した母は娘の幽霊の凶行を止めるべく説得を試みるのだが…」

 望月みさお先生の作品の中で恐らく、最も怪奇マンガらしい作品ではないかと思います。
 理由は、幽霊少女の凶悪な容貌、この一点のみ!
 決して上手くはありませんが、妙な描き込みが幸い(災い?)してか、やけに生理的嫌悪感を煽る絵になっているように感じます。
 そして、昨今のオカルト漫画に出てくる、おとなしめの幽霊とは違い、出てくる時には毎回、血まみれの、おどろおどろしい顔をしているところも好印象です。
 あくまで「ゲテモノ」ではありますが、この作品は今読んでも、なかなか読み応えがあるのではないでしょうか?

・注1
 欄外の説明によると、「静岡県の藤さんの白雪がとけ清水の湧き出す滝川と言う所にあります」とのことです。
 作中に「照手姫」の記述もありますので、「かがみ石公園」のことなのでしょうね。
 鏡石の近くには「時枝とその母親の碑」があり、その碑を拝むと、家族円満に暮らせるとのことですが、心当たりのある方は是非連絡ください。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。後ろの遊び紙に紙の貼り付けあり。

2019年1月12日 ページ作成・執筆

東京漫画出版社・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る