金田君子「まぼろしの館」(220円)

「山奥に人知れず建つ、豪勢なお屋敷。
 そこへ四人の男女が宿を求めて、訪れる。
 心中するつもりで山を彷徨っていた姉妹の千秋と夕子(注1)、全盲の青年、片桐ジョー、ハイキングの途中で遭難した早大二年の大木油津。
 屋敷には、美しい婦人が一人住んでおり、彼らを館に迎える。
 四人が一つ部屋で休んでいる時、千秋は窓の外に仮面を付けた女性の姿を見る。
 また、食事中、食堂に掛かっていたマリア様の絵が、いつの間にか、美しい少女の肖像画に変わっていた。
 婦人によると、その少女はサベリノ(愛称はリーノ)という名で、彼女の娘であった。
 リーノはそれは綺麗な少女であったが、16歳で亡くなったと言う。
 不穏な空気を感じながらも、食後、寝込んだ夕子を除いたメンバーでトランプに興ずる。
 途中、千秋は夕子の様子を見るために場を外すが、広大な屋敷で迷子になってしまう。
 ふと人の気配を感じ、夕子が振り向くと、そこに死んだはずのリーノが燭台を片手に立っていた。
 リーノは「ゆるして」と泣き崩れると、その場を逃げるように去る。
 リーノは死んだはずだと、千秋が寝室に駆け戻ると、そこには冷たくなった夕子の死体があった。
 どうも急激なショックによる心臓麻痺らしい。
 夕子はリーノに対して、復讐することを決意する。
 リーノ、そして、仮面の女性は一体何者なのか…?
 そして、千秋に対して憎悪の眼差しを向ける婦人の真意とは…?」

 「まぼろしの館」は、金田君子(上原きみ子)先生が貸本漫画時代に二冊描いた怪奇マンガのうちの一冊であります。
 強烈な「ゲテモノ」怪奇マンガ「十五年目の赤い夜」と較べると、ミステリアスなムードを前面に押し出した作風となっております。
 また、ヒロインと全盲の青年の間のロマンスも(半ば強引に)盛り込まれているのも、「少女漫画」風と言えますでしょうか。
 ただ、謎解きやラストがどうもすっきりせず、個人的には「十五年目の赤い夜」の方が勢いがあって、好きです。
 まあ、「人に歴史あり」ってことで…。

・注1
 夕子は、熱にやられて「おしとつんぼ」になった少女という設定です。
 大木油津が夕子をバカにする発言をしており、身体並びに精神障害者を揶揄する描写は珍しく思いました。
 現実には、いまだ、ざらにあることなんですがね。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。表紙にカッターで切り付けたような小傷が幾つかあり(仮面の少女の部分)。糸綴じあり。pp7・8、上部の奥に切れあり。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けと書き込み等あり。

2017年4月5日 ページ作成・執筆

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