三田京子「窓無し館の美少女」(220円)
「山奥にひっそりと佇む西洋館。
窓は一つもなく、煙突からは絶えず煙が上がっていた。
その館に住むのは、村の人々に「敷居守り」(注1)と呼ばれる、美しい少女がただ一人。
その少女の美しさに惹かれ、その館に入った青年達は誰一人として館から出てこなかった。
ある日、路夫という行き倒れの青年が館に招き入れられる。
路夫は、しのぶという名の少女を探して、旅を続けていた。
しのぶは路夫の許嫁であったが、しのぶが顔に火傷の傷を負ってから、路夫の心は別の女性に移る。
しのぶが、その女性を殺害し、失踪して初めて、路夫はしのぶへの想いに気付き、彼女を探し続けていたのであった。
窓無し館に住む、謎の美女は、しのぶなのであろうか…?
そして、館に秘められた秘密とは…?」
三田京子先生の初期の作品はかなり好きなのですが、これは失敗作だと思います。
ストーリーが穴だらけで、説得力というものがまるでありません。
また、ヒロインのしのぶは、ネタばれですが、「路夫に捨てられ、ノイローゼになり、路夫と同じ年頃の青年を家に引き込んでは、暖炉で焼き殺していた」というエキセントリックな少女。
ますますもって、説得力というものが遠のいていっているにもかかわらず、作者側は「純愛路線」を断行。
ラスト、警察に追われたしのぶと路夫は心中し、三田京子先生の「ぽえみ〜」な美辞麗句で締めくくられるのですが、こちらは「ぽか〜ん」とした顔で固まるばかりです。
ただ、一つ、個人的に印象的なシーンがあります。
それは、しのぶが路夫の想いを確かめるために、自分の火傷の痕に頬ずりするよう言うシーン。
何かこっ恥ずかしくて、ヘソの周りがムズムズしました。
でも、「はだしのゲン」を読んだら、頬ずりぐらいじゃ、生ヌルいですよね。
・注1
この本によると、「敷居守り」とは、
「敷居をまたいで家に入る時どこかでしくしくと女のすすり泣く声や「ふうっ」というため息が聞こえる
この泣き声やため息を聞くと近く不幸が起きるということです
敷居の下にかくれている敷居守りが知らせるのです
又犬やねこに化けることもあります」
とのことです。
何かの伝承や伝説なのかもしれませんが、寡聞にしてわかりません。
・備考
ビニールカバー貼り付け。表紙の上下に小さな裂けあり。pp70・71、何かが挟まって、コマ内、剥がれ箇所あり。シミ多し、特に、pp88〜93、ひどい。糸綴じ穴あり。小口の底面に「ao」の書き込みあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕とボールペンでの書き込みあり。
2017年1月18日 ページ作成・執筆