西武三郎「私を殺して」(200円/1964年1月9日完成)
「黛ミチは黛家の御令嬢。
環境にも美貌にも恵まれてはいるが、大金持ちの娘らしく、非常にわがままであった。
切手蒐集が趣味のミチは、伝説の「フォンヌの切手」がローマにあるという噂を、男友達から聞く。
「フォンヌの切手」は、エジプト美人の絵柄で、数億円もする、大変珍しいものであった。
父親の商用について、ローマを訪れたミチは奔走して、切手の在処を探すが、徒労に終わる。
ローマ滞在が終わりに近づいた日、ミチは乞食の少女に施しをする。
彼女がお礼に差し出したのは、「フォンヌの切手」だった。
ミチに切手を渡した途端、少女はその場に倒れ伏し、老婆になってこと切れていた。
そんな薄気味悪い出来事があったにもかかわらず、「フォンヌの切手」を手に入れたことにミチは有頂天。
この切手には何でも願い事が叶うという伝説があり、その伝説通り、ミチの願望は全て望み通りとなる。
しかし、切手に「明日起こる事を私だけに教えて 私にだけわかるようにしてちょうだい」と願った時から、「フォンヌの切手」はその邪性を明らかにしていく…」
恐らく、東京漫画出版社での西先生の第一作です。
「SF少女スリラー」と銘打ってありますが、普通の「少女スリラー」です。
この頃は、阿木二郎先生の影響でしょうか、少女マンガに近い絵柄でして、陰影の効いた西先生独特な絵に慣れた私から見たら、それもなかなか新鮮です。
ただ、内容の方は、かなり「B級怪奇マンガ」の趣があります。
主人公は、明日死ぬことになる人間が化け物に見えるようになるのですが、それが非常にチープな面をしておりまして、子供が必死に頭を捻って学習ノートに鉛筆片手で書き上げた「仮面ライダーの怪人」もしくは「悪魔超人」に近い感触があります。
んにしても、片端から身近な人間が悲惨な死に方をしていく後半は、ジェットコースター的展開です。
鉄筋による圧死、電車で下半身轢断、墜落死する赤ん坊を抱いた母親…かなりのトラウマ度です。
他にも見どころはありまして、後記では西先生の全身像の写真(側面からの撮影、眼鏡はポケット、サンダル履き)が載っております。
カバーの袖(って言うのかな?)には、東洋大学教授・渡辺正知氏による推奨文があります。
個人的には、この推奨文が一番の謎です。
・備考
ジャンク。ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。pp19〜22、pp35・36、ページ切り取られたり、千切られていて、なし。pp17・18、下部を大きく切り取られている。pp7〜16、ページの真ん中を鉛筆(?)か何かで縦に大きく引き裂いている。pp53〜58、下部にX字型にに鉛筆か何かで抉っている。p53、ベレー帽に色鉛筆によるカラフルな落書きあり。pp59・60、下部に小欠損あり(コマにはかからず)。p108、上部にロウソクのロウが垂れている。巻末に貸出票貼り付け。全体的にシミ多し。
でも、何がキツいかって、酒に酔った状態でヤフオクをやって、後先考えず勢いでこんなジャンク本を高値で落札したのが、一番キツい…。
とは言うものの、こうして紹介文が書けるのも、本が手もとにあるお陰なので、良しとしましょうか。(と、言って、自分を納得させます。)
平成27年10月12日 ページ作成・執筆