浅丘ルリ「死面の貴婦人」(220円)
「蝶子が目覚めると、寝室にお手伝いのお菊の刺殺体が転がっていた。
慌てて姉の久美子を呼ぶが、姉は意外や、落ち着いた様子。
驚かぬよう前置きして、久美子は、蝶子がお菊を殺したと話す。
久美子によると、夜更け、蝶子は突然起きると、窓の外に死んだ母親が来ていると騒ぎ始めた、と言う。
父親が留守のため、久美子がお手伝いのお菊を連れてくると、蝶子は発作的にキクをナイフで刺し殺し、何事もなかったかのように寝床に戻ったということであった。
全く記憶にない蝶子は混乱するが、更に久美子は言葉を続ける。
母親は死んだのではなく、本当は、精神病院にいるのであった。
そして、父親がたまに留守にするのは、母親に会いに行くためだと言う。
自分にキチガイの血が流れていることを知り、蝶子は恐慌を来たすが、久美子は自分に全て任せるよう蝶子をなだめる。
二人はお菊の死体をどうにか隠し、蝶子は病気と言うことにして、姉の久美子は周囲に不自然に思われないよう、うまく立ち回る。
しかし、蝶子は夜、お菊の幽霊を目にすることが度重なり、罪の意識も加わって、ますます精神状態は不安定になる。
秘密を守るため、久美子はそんな妹を甲斐甲斐しく世話するが、久美子には裏の顔があった…」
これもまた、まあ、それなりの作品なのであります。
今となっては、手垢のついたサスペンスではありますが、大きな破綻はないので、安心です。
この作品は過去にとある本にて紹介されたことがありまして、その本とは、唐沢俊一氏・監修「まんがの逆襲 脳みそ直撃!怒涛の貸本怪奇少女マンガの世界」(福武書店/1993年11月10日第1刷・12月20日第2刷発行)のp188。
この本の中で、ラストの一ページに、謎の説明を長ゼリフで述べているところを、突っ込まれておりまして、この点に関しては、私は同感です。
タネ明かしがもうちょっとスマートだったら、今現在でも、浅丘ルリ先生のマンガはもう少し人気があったかもしれません。
ちなみに、タイトルの「死面の貴婦人」でありますが、「死面」は、姉の久美子が妹を驚かしすのに使っていた、幽霊のラバー・マスクのことを指すようです。
タイトルからして、「へっぽこ」かましてくれますね。
・備考
ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。前の遊び紙、痛み。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2016年10月15日 ページ作成・執筆