三田京子「怪談乱れ舞扇」(220円)


「花柳流日本舞踊の師匠、詩織。
 彼女は裕福な家柄の娘であったが、貧しい高校生の佳夫と恋をし、駆け落ち結婚する。
 だが、大した学歴のない佳夫は良い職に就けず、その日暮らしを続けるうちに、身体を壊し、床に伏せる身となる。
 今は、詩織が日舞の月謝で生計を立てていたが、詩織の佳夫を献身的に介護する。
 そんな仲睦まじい二人であったが、日舞の弟子、小野は、美しい詩織に目をつけ、ことあるごとに付きまとう。
 ある日、詩織の後をつけ、家に押しかけて来た小野は、佳夫と言い争いになる。
 言い争いから掴みあいと発展、はずみから小野は佳夫を刺殺してしまう。
 小野は強引に詩織を連れて逃げ、彼女を佳夫殺しの共犯者だと脅す。
 詩織は機会を窺って、小野を殺そうとするが、失敗し、小野のもとから逃亡、逃げまどった末、川辺に辿り着く。
 疲れ果てた詩織の目に、佳夫の幻が映る。
 詩織は彼を追って、川の中に押し入り、流されるが、気が付くと、彼女はお寺のお堂に寝かされていた。
 彼女を助けたのは、西雲寺の修行僧、修念で、彼女が警察に追われる身であることを知りつつも、匿ったのである。
 だが、彼に迷惑をかけたくないという思いと、小野への復讐の念から、体力が回復すると、詩織は寺を脱け出す。
 そして、佳夫の面影を胸に抱きながら、山の神の祠の横で、「花柳芙蓉」の舞扇を手に踊りを舞う。
 その時、風が吹き、舞扇は川に流されてしまう。
 下流でその舞扇を拾ったのが、持ち金を使い果たして、どん詰まりになった小野であった。
 小野は自分の思いを遂げるため、詩織のもとへ向かう。
 詩織が小野に強姦されようとしている時、修念が駆けつけ、小野を扼殺。
 殺人を犯したために、寺にいられなくなった修念と共に、詩織はまたもや逃亡することとなる…」

 後書きによると、「大人の世界を少々入れて描いて」みたとのことですが、「少々」なんてものでなく、恐ろしくヘビ〜な仕上がりです。
 ぶっちゃけ、これって「毒婦」ものなのです。
 ネタばれですが、「後半、詩織に関わった男達は、彼女の色香に狂って、片端から殺し合い、そのうちに、小野と再会。レイプされた詩織は、態度一変させて、小野になびくものの、半年後、就寝中の小野を鎌でめった刺しにして殺害。遂に、警察の御用になった詩織は死刑」という、なんちゅ〜か、凄まじいストーリー展開となっております。
 ストーリーが斯様に生臭い内容なので、「怪談」というよりも、「実録!情痴犯罪」といった趣で、殺人シーンは凄惨そのもの。
 個人的には、三田京子先生は「純愛」路線よりも、こういう生臭い内容の方が水が合っていたように思います。

・備考
 ビニールカバー貼り付け、また、それによる歪みあり。本体、湿気のためにベッコンベッコン。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。経年の割には美本(誰も借りなかったのか?)。

2017年1月4日 ページ作成・執筆

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