しきはるみ「継母妖怪伝」(220円)
「江戸時代。
懐妊している、ある継母。
継母は、主人が長期の旅に出ている間に、前妻の七歳の娘、早苗を、病の身に何も食べさせず、餓死させる。
継母は、主人の愛を自分の子一人に独占させるために、継子を殺したのであった。
しかし、その報いか、継母が産んだ女児、お加代は、二口女であった。
(ストーリーの都合上)主人を含めて周囲にはどうにかこうにか隠し通して十七年、お加代は美しい娘となっていた。
そんな彼女に、主人の上役の息子との縁談話が舞い込む。
二人は互いに気に入り、結婚、幸せな日々を送るが、その幸せが失われる日が来る…」
妖怪「二口女」を扱ったマンガです。(注1)
粗筋を読めば、冷酷な継母により餓死させられた継子の怨念が、継母の産んだ子に乗り移り、復讐する…のかと思うでしょうが、全くそんなことありません。
また、自分が「二口女」であることにヒロインが悲嘆に暮れ、悩み苦しむ…のかと思いきや、ほとんどそんなことしてません。
お気楽に、饅頭をパクついているだけなのです。
涼しい顔して、饅頭ばっかり食ってんじゃねェー!!
(ネタバレですが、折角結ばれた男性には、後ろの口で饅頭をパクついているところを目撃されて、捨てられます。自業自得ですね。)
まあ、こんな感じのマンガですので、始終軌道を外れたまま、迷走して、ムリヤリな結末に突入するのも、無理なからぬこと。
でも、視点を変えると、実に「貸本怪奇マンガ」らしいんですよね。
私としては、「テキト〜さ」「底の浅さ」「ゲテモノさ」をひっくるめて、やはり好きな作品です。
1968年頃、しきはるみ先生はあの「週刊少女フレンド」(講談社)に、同じ「二口女」のテーマで「たたり」という作品を描いております。
断片的にしか読んでおりませんが、こちらはストレートな復讐譚になっております。
「ねこ地獄」の単行本に収録されておりますが、ひどく短縮されたもので、雑誌でないと全部読めないという、悩ましいことになっております。
最後に、二口女への「授乳シーン」が描かれているのは、この作品だけ!!と胸を張って(注2)断言いたします。
・注1
このタイプの「二口女」は、継子を餓死させた継母がなると、水木しげる「妖怪おもしろ大図解」(pp20・21)には書いてありまして、江戸時代に描かれた「百鬼夜行」の絵等にはそういう説明がつけられていたのでしょう。
国書刊行会より図版が幾つも出版されておりますが、ノー・チェックなんです、すんません…。
また、似たような妖怪に「飯喰わぬ女房」というのがありますが、あっちは「山姥」の仲間のようです。
(岩井宏實(ひろみ)「暮しの中の妖怪たち」(河出文庫/1990年7月4日初版発行・2000年4月4日新装版初版発行)p52を参考にしました。)
・注2
最近、胸を張っても、それ以上に腹が出る体形になってしまいました。
息を詰めて、腹を引っ込ましても、依然、腹が出ているという有様。
これがメタボってことなのね…。
・備考
ビニールカバ剥がし痕あり。カバー貼りつき。pp14・15、何かが挟まって剥げた痕あり。
2016年7月10日 ページ作成・執筆