三田京子「妖しき夢をあなたに」(220円)



「鈴子の家の前で、行き倒れていた老婆。
 介抱された老婆はうわ言で「東海ビル…四号室…」と繰り返す。
 夜中、老婆は家をさまよい出て、鈴子はその後をつける。
 老婆が向かったのは、例の東海ビルであった。
 だが、そこには四号室はなく、老婆は落胆し、何処かへと立ち去る。
 翌朝、鈴子はビルの管理人に問い合わせるが、やはり四号室は存在しない。
 とは言え、妙に引っかかり、鈴子は再び、東海ビルを訪れる。
 すると、壁だったところに四号室の扉が開いていた。
 鈴子が扉の中に入ると、そこは森の中で、扉は消えてしまう。
 仕方なく、鈴子が道を進むと、おとぎ話に出てくるようなお城があった。(下の画像を参照のこと)
 そこには、この世の者とも思えぬ美少年、夢雄と、彼の恋人らしい美しい娘、そして、同じ顔の侍女達が暮らしていた。
 夢雄は鈴子を城に迎え入れるが、娘の方は、鈴子に敵意をむき出しにする。
 この城では好きなように暮らしてよく、遊ぼうが働こうが全く自由。
 素敵な生活に感動しながらも、根がDIY(Do it yourself)の鈴子は自堕落に陥らず、自分でできることは全部、自分でこなす。
 一方、夢雄の恋人らしい娘は毎日、遊びほうけていたが、目に見えて老いていく。
 なのに、娘は、鏡を見ても、自分の老化に気付かないらしい。
 鈴子は、夢雄の仕業と考え、その空間から逃げ出そうとするのだが…」



 三田京子先生らしい、異世界譚です。(あのお城はどうかと思う…。)
 んで、ヒロインは、相手が異界のものだろうが怪物だろうが、美少年であれば許してしまうパターン。
 でも、この作品に関しては、美少年の正体(ネタばれしております。注意!)があまりにビミョ〜で、説得力に欠けると思います。
 作者としては、「醜い欲望」に対する(潔癖症な)憤りがあったのかもしれません。
 でも、美醜や善悪なんて、所詮は相対的なものでしかないと思うのですが…。

・備考
 カバー欠。表紙に若干の痛み。一部、綴じ外れ。後ろの遊び紙に貸本店のスタンプあり。

2020年2月4日 ページ作成・執筆


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