望月みさお「怪談赤い雪」(220円)

「台風による洪水で田畑が全てダメになった農村。
 生活のために、村の大人達は皆、出稼ぎに出る。
 真知子と政子の両親も同じく二人を置いて、村を出ることとなる。
 大人達が不在の間、子供達は保育園の矢代先生に預けられる。
 しかし、若い女性の手一つで、子供達の面倒を見ることは並大抵なことでなく、また、食料も心もとない。
 先生自身も洪水で全てを失い、東京からこんな村に出てきたことを後悔したりもする。
 そんな弱気な自分を叱咤しながら、矢代先生は最善を尽くすが、ある雪深い日、食料が底を尽いてしまう。
 空腹に苦しむ子供達を見ていられず、矢代先生は村人に金を借りようと雪の降る中、一人出る。
 その途中、矢代先生は、真知子と政子の父親と出会う。
 姉妹の両親は、子供達が心配なために、出稼ぎの金を手にすると、村にとんで戻ったのであった。
 矢代先生は、姉妹の父親に金を貸してくれるよう懇願するが、父親は頑として突っぱねる。
 頼みこむ矢代先生に父親が後ずさりした際に、運悪く足を滑らして、土手から転落、頭を石で打って死亡する。
 そこへ姉妹の母親がやって来て、矢代先生を人殺し呼ばわりし、取り乱した矢代先生は母親を絞め殺してしまう。
 矢代先生は自首を考えるが、子供達のことを考えると、それもできず、姉妹の両親の死体を雪で覆うと、金を持って、保育園に戻る。
 以来、保育園に姉妹の両親の幽霊が幾たびも訪れるようになる。
 矢代先生は、全ての親が子供達を迎えに来た後、自首し、真知子と政子の姉妹が幸せになるよう取り計らうと約束するのであった…」

 悲惨な話です。
 半世紀前は「貧困」はまだまだ深刻な問題であったことでしょう。
 また、「出稼ぎ」も高度成長期の繁栄の陰で様々な悲劇があったと思います。
 そういうことをちょっぴり考えさせられたマンガでありました。
 と、しんみりしてしまいましたが、巻末の読者のページに心洗われます。
 大抵の読者コーナーというのは、漫画家志望のティーン達が力の入った模写を送ってくるイメージがあり、それなりの出来栄えのものが多いように思います。(後にプロになった人もいます。)
 しかし、望月みさお先生の読者コーナーでは、四、五才から中学一年生までのチビッ子達が描いた、素朴だけど、絵心のあるイラストが掲載されております。(注1)
 子供達の伸びやかな感性が産み出したイラストに、望月みさお先生は何か心打たれるものがあったのではないでしょうか。
 ピュアな方だったのではないかと私は考えております。
 決して、イラストの応募がろくろくなかったワケではないと信じてます…いや、そう信じたい…。

・注1
 私が記憶している限り、他にチビッ子達の楽しいイラストで満ち溢れていたのは、五島慎太郎先生の黒枠単行本の読者コーナーだけです。

・備考
 カバー貼り付け。糸綴じの穴あり。小口底に書店の記入あり。後ろの遊び紙に数字に記入あり。

2017年9月19日 ページ作成・執筆

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