丘野ルミ「とかげ少女」(220円)
「もうすぐ赤ん坊が産まれる若夫婦。
ある日、夫が庭仕事をしていると、とかげの母子を見つける。
この手の生き物を見ると、殺さずにはおれない夫は、母とかげの哀願にも関わらず、スコップで赤ちゃんとかげを惨殺する。(上の画像を参照のこと)
その祟りか、夫婦の間に産まれた子供は、とかげ赤ちゃんであった。
子供が「かたわ」であることを妻から隠すために、夫は赤ん坊を裏庭に生き埋めにして、別の赤ん坊をさらって、自分達の娘として育てる。
十年後、その子、くに子は明るく、素直な娘に育ち、一家は幸福な日々を送っていた。
そんなある日、くに子は、近所に越してきた弘子という少女と知り合う。
実は、弘子は母とかげが変身したものであった。
母とかげは、裏庭にある棲家の穴にくに子を引きずり込み、首から血を吸って、くに子になり代わる。
そして、十年越しの、母とかげの復讐が今、幕を開く…」
「とかげ人間」を扱ったマンガとしては、貸本では、江戸川きよし先生の「とかげ娘」(曙出版)というマンガもありますが、それよりもこちらの方が云十倍面白いです。
いやはや、この「とかげ少女」、何とも、スゴいマンガです!!
その「凄さ」をどうにか言葉で表しますと、丘野ルミ先生のユル〜い絵柄で描かれた、無計画極まりない「悪趣味」さとでも言えば、いいでしょうか?
徹底して荒唐無稽な内容故、「悪趣味さ」と「マヌケさ」が絶妙に入り混じり、何とも形容しがたい作品になっております。
まあ、ここは実物を見て、判断してもらった方が早いでしょう。
まずは、夫が母とかげに襲われるシーン。(切れたしっぽが手になって襲うという奇想が冴えてます。)(注1)
次は、作品のハイライト、穴に引きずり込まれたくに子が母とかげに血を吸われるシーン。(マヌケなのに、陰惨という不思議…。)
そして、ラスト、夫と母とかげの手に汗をあまり握らない対決。(母とかげの大きさがまちまちなところがいいんです。)
父親の最期は「こうもり少女」とよく似ております。(「く、くるしい〜っ し、死にそうだ〜っ」というセリフはかなりおマヌケです。)
画像をご覧になった皆様方が納得することはないと思いますが、この「とかげ少女」は、丘野ルミ先生の怪奇マンガの中での白眉の一つというだけでなく、貸本怪奇マンガの中で、一つの頂点を極めたマンガだと、私は信じております。
だからと言って、漫画史には決して残ることはないであろうところがミソなのです。
・注1
このアイデアは、もしかしたら、古賀新一先生の「白へび館」の影響があるかもしれません。
個人的には、「白へび館」と、どこか似た雰囲気があるように感じます。
・備考
カバー痛み。糸綴じあり。読み癖あり。後ろの遊び紙に、貸出票の剥がし痕とスタンプあり。
2016年10月30日 ページ作成・執筆
2017年6月17日 加筆訂正