谷ゆきお「縮んだ手」(220円)
「美子は、海岸で写生をしている時、外国人船員がナイフで刺されるところを目撃する。
瀕死の外国人から、美子は、美しい外国人女性の写真と名前と住所を書いた紙をことづけられる。
兄と共にその女性のもとを訪れると、写真は三十年前のもので、女性はみすぼらしい老婆になっていた。
老婆は写真を届けてくれたお礼として、二人に「縮んだ手」を渡す。
この手には不思議な魔力があり、何でも願いを叶えてくれるらしい。
だが、老婆は願い事をする時は慎重にするよう、二人に警告する。
願い事が悪い方に叶えられたために、外国人船員は死に、老婆は零落してしまったのであった。
半信半疑ながら、兄妹はその手を持ち帰り、兄は骨董好きの父親に売りつける。
そんな時、父親が専務を務める会社が経営難に陥る。
二進も三進もいかなくなった父親は借金の六百万円を「縮んだ手」に願う。
その手が縮む時、願いが叶えられるが、それがもたらす結果とは…」
「奇談シリーズ」の一作ですが、あまり面白くありません。
谷ゆきお先生は「アレンジの妙」が魅力だと個人的に考えておりますが、これはジェイコブス「猿の手」そのまんまで、全く捻りがありません。
冒頭にミステリーの要素(全くストーリーと関係なし)や、突如乱入してくる精神薄弱者の描写(全くストーリーと関係なし)がありますが、正直、ない方がましだと思います。
ただ、ラスト、死んだ両親が家に戻ってくる描写は、暗示で恐怖感を煽った原作と違い、ズバリ「ゾンビ」に描いていて、ちょっぴり感動しました。(上右の画像を参照のこと)
・備考
状態悪し。Y文庫仕様(カバー裏に新聞紙等による補修。表紙を本体から取り外し、本体を何らかの厚紙で覆っている)。糸綴じあり。カバーの一部に剥がれあり、また、背表紙色褪せ。p21、p43、p45、コマ内に剥げあり。
2017年10月7日 ページ作成・執筆