森由岐子「生きている雪女」(220円)

「ある雪国の小さな村で、病弱な母親と暮らす、美しい少女、ゆき。
 ゆきは生活のために村の庄屋の家に奉公に行くことにする。
 つらい仕事に黙々と従事するゆきに、庄屋の息子、茂樹は優しく接する。
 ゆきも茂樹に心惹かれるものの、身分違いの恋であり、何か問題があれば、村八分になることは明白。
 身を引こうと思いつつも、茂樹の優しさに心暖まる。
 しかし、夏祭りの際、茂樹の許嫁である、隣村の村長の娘を袖にしたことから大問題となる。
 ゆきを愛していると告白する茂樹に、茂樹の両親はからめ手の工作に出る。
 二人の愛を確かめるため、茂樹を東京の大学に行かせ、その間にゆきを村から追い出そうというのであった。
 しぶしぶながら納得した茂樹は村を出る前日、ゆきに会う許しを得る。
 茂樹はゆきを安心させようとするが、ゆきは不吉な予感に胸を震わせる。
 ゆきの予感は的中し、ゆきの一家は村八分にされ、喰うや喰わずという有様。
 そして、冬のある日、ゆきの母親が危篤に陥る。
 病院に運ぼうとしても、村八分にされているゆきに手を貸す者はいない。
 雪が降りしきる中、ゆきは、母親を載せた橇を一人引っ張っていくが、途中、母親は死亡。
 力尽きたゆきは雪に埋もれていきながら、茂樹を自分のものにすると決意する。
 一年後の冬に茂樹が村に帰ってくるが、村にはゆきの姿はない。
 村から出て行ったと両親から聞かされ、ゆきのことを想い続けた茂樹は放心状態に陥る。
 ある夜更け、茂樹は外から、どこかで聞いたような美しい歌声が流れてくるのを耳にする。
 外に出て、歌声をたどると、そこに白装束のゆきが立っていた…」

 唐沢俊一&ソルボンヌK子「森由岐子の世界」(白夜書房)にて紹介されております。
 悲恋ものに「女の情念」のスパイスを加えているところが、当時としては一歩抜きんでていたのかもしれません。(驚くことに、同衾描写があります。)
 「女の情念」と言えば、東京漫画出版社にもう一人、三田京子先生(故人)という個性派がおられましたが、あちらより、より自然なストーリーつくりで、森由岐子先生の作品の方が読みやすい印象があります。
 ただ、安易な口約束をしまくる茂樹がちょっと(いや、かなり)ムカつくかも…。

・備考
 状態悪し。I文庫仕様(カバー裏に新聞紙等による補修。表紙を本体から取り外し、本体を何らかの厚紙で覆っている)。糸綴じあり。唇をピンク色に塗る落書きが全体的にあり(許容範囲)。p43の上部にピンクの色鉛筆で塗りつぶしたような落書きあり、また、消してはいるが、落書きの跡がいくつかあり。全体的にシミ多し。

2016年5月12日 ページ作成・執筆

東京漫画出版社・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る