望月みさお「ゆうれい母さん」(200円/1964年頃?)



「瀬戸内海のある島で起こった大量殺人事件。
 犠牲になったのは、同じ屋根の下に住む、村上家の長男と次男の一家であった。
 生き残ったのは、長男の妻、すみ代とその娘の芳子と、次男の妻、きぬ子とその長女の恵子と四女の清子だけ。
 毒入りのまんじゅうによる犯行であったが、犯人の見当は皆目つかない。
 だが、実は、犯人は次男の嫁のきぬ子であった。
 村上家の財産を狙った、きぬ子は、自分が疑われないよう、自分の家族をも巻き添えにして、長男一家を皆殺しにしようと企んだのである。
 しかし、すみ代と芳子が生き残ってしまい、きぬ子はこの二人も亡き者にしようと画策する。
 ある日、きぬ子は山中にすみ代を呼び出し、毒入りジュースで殺そうとするが、自分の娘、清子がジュースを飲んで死んでしまう。
 仕方なく、きぬ子はすみ代を脅して、崖から海へ転落させるのであった。
 きぬ子は、警察にすみ代が清子を毒殺した後、海へ飛び降り自殺したと嘘の供述をする。
 肉親を皆失い、しかも、母親を人殺しにされた芳子は、母親が転落死した崖で、日々悲嘆に暮れる。
 すると、芳子の前に、母親の幽霊が現れ、ことの真相を明かす。
 そして、すみ代の幽霊は、芳子を、きぬ子の魔の手から必ず守ると約束するのであった。
 きぬ子は芳子の命を狙い、虎視眈々と機会を窺うが…」

 「実話怪談」シリーズでは初期の作品のようで、少女マンガを描いていた頃の絵柄が色濃いです。
 後期の作品のように、「表現の幅を広げようとしたら、ワケわからなくなっちゃいました」(よく言うと「実験的」)というようなことはあまりなく、絵柄は割合にオーソドックスであります。
 ただ、内容的には、二家族もほぼ全滅していますので、ヘビーでありますが…。

 ハイライトは、きよ子が芳子を風呂桶に閉じ込めて、煮殺そうとするシーンです。
 母親の幽霊がどうにかして娘を救おうと、東奔西走する様は、なかなかテンパっております。
 ちなみに、悪女にはきっちり「最後のしんぱん」(p90)が下りますので、御安心くださいませ。

 あと、どうでもいいことですが、この作品中、「クルクルパー」(p86)という言葉が出てきます。
 こめかみの横で指を回す描写もちゃんとあります。
 この言葉とジェスチャーが半世紀前から存在していたことにちょっと驚きました。
 いつ頃から使われている言葉なのでありましょうか?

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。カバーに痛み、表に欠損幾カ所あり、また、裏は歪みあり。糸綴じの穴あり。読み癖あり。

2016年11月8日 ページ作成・執筆

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