谷ゆきお「地獄墓」(220円)

「実家がたばこ屋の青年、直彦はイボだらけの容貌に猛烈なコンプレックスを持つ引きこもり。
 陰気で愛想も悪い直彦は、近所の金持ちの娘、紀子に恋をする。
 粘着質だが臆病な性格故、直彦は酒店の店員、早崎に紀子との仲を取り持つよう頼む。
 しかも、早崎に本気を示すため、自分の右足の小指を切り落とすことまでする。(何故そういう無意味なことをするのか理解に苦しみますが、ストーリーの都合上、必要だったようです。)
 だが、紀子は結婚を目前に控えており、早崎は直彦をはなからだますつもりであった。
 紀子が金を必要としていると嘘をつき、直彦が用意した金を持って、早崎は逐電。
 自分がだまされていることを知った直彦は、捨てばちになり、深夜、紀子の寝室に忍び込む。
 しかし、直彦は自分の想いが届かぬことを悟り、庭で自殺するのであった。
 そして、時が過ぎ、紀子と、銀行に勤める江波の間に、浩子という女児が産まれる。
 その女児は、生まれつき右足の小指が欠損していた。
 また、顔面にイボが少しずつでき、紀子は直彦の呪いでないかと怯える。
 ある夜、就寝中の紀子は血まみれの直彦に首を絞められ、抵抗するうちに、直彦を突き飛ばす。
 だが、直彦だと思ったのは浩子であり、浩子は柱に頭を打ち付けて死んでいた。
 紀子と江波は庭に浩子を埋め、翌日、浩子に模した人形を抱いて、旅行に出る。
 旅先で、浩子が海に落ちたことにして、浩子の死を偽装するつもりなのであった。
 だが、直彦の怨霊はどこまでも二人に付きまとう…」

 ひどく陰湿なストーリーでして、あまり気持ちのいい作品ではありません。
 どう贔屓目に見ても、悪いのは直彦であって、紀子は明らかに被害者です。
 好きでもない男に、その男が死んだ後も付きまとわれ、紀子さんにはお気の毒としか言いようがありません。
 紀子さんは、前半は清楚に描かれていたのに、後半、顔が段々とアメコミ調のキツい顔になっており、その計り知れない心痛を窺い見ることができます。
 とりあえず、結論は「しつこい男は嫌われる」ってことですね。(注1)

・注1
 経験上、「しつこい男は嫌われる」し、「しつこくなければ、全く相手にされない」のであります。
 結局、「しつこい」云々は関係なく、モテる奴はモテるし、その逆もまた然りなのです。

・備考
 ジャンク。ビニールカバー貼り付き(一部、破れ)。糸綴じあり。pp1〜4、ページの半分以上欠損。落書きだらけ(ほとんどは鉛筆だが、p8とp17は青ボールペン、p30は赤ボールペンで描かれており、イタい)。読み癖あり。シミ、切れ、小欠損、多々あり。前後の遊び紙に貸本店のスタンプあり。

2016年7月20日 ページ作成・執筆

東京漫画出版社・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る