谷ゆきお「めくら水神」(220円)



「岩手県、青柳村。
 晶子は、病気の父を抱えながらも、明るく元気な娘さん。
 ある日、生活の足しにするために、晶子は近所の黒石沼で釣りをするが、奇妙なことに、目のない魚ばかりが釣れる。
 結局、何の収穫もないまま帰宅すると、魚籠の底から、目のない魚が一匹、跳び出てきた。
 晶子はその魚を水槽に入れて、大切に飼う。
 この目なしの魚は奇妙なところがあり、水槽から姿を消したかと思えば、また、現れたり、晶子と球遊びをしたりする。
 一方、父親の病気は思わしくなく、医者へのつけは溜まりまくり、薬代にも事欠く始末。
 そんなある日、晶子は大金を入手するチャンスを耳にする。
 隣の白柳村の鏡池に、巨大化した白ウナギの化物が現れ、その化物に捧げる人身御供を募集していたのであった。
 晶子は父親の幸せのために、皆には内緒で、人身御供を申し出る。
 晶子は、残り僅かな日数を親しい人達と楽しく過ごし、ペットの目なし魚はもとの沼に返す。
 当日、丸太に縛り付けられた晶子が鏡池に浮かべられると、目前に、巨大な白ウナギの化物が現れるのだった…」

 1960年代後半、東京漫画出版社から奇想天外な作品を数多く送り出した、谷ゆきお先生でありますが、その作品の中で、傑作の一つと断言してもいいと思います。
 メチャクチャ面白いんですけど、コレ。
 元ネタは、柳田国男「日本の昔話」(注1)に収録されている「盲の水の神」(pp108・109)だと推測しております。
 ただ、内容的には「白い鰻」ぐらいしか共通するものはなく、「盲の水の神」というタイトルを借りて、全く別の話に仕立てたのではないか、とも考えております。
 実際、このマンガは「現代怪談」(出版社が谷ゆきお先生に設けたジャンル)というよりは、ぶっちゃけ、「怪獣」マンガであります。
 核実験による奇形魚の話かと思いきや、突如、巨大な白ウナギのモンスターが出現。(初っ端からスイカ泥棒を豪快に丸飲みしちゃってます。)



 目まぐるしく話は展開していき、ラストは「白ウナギのモンスター vs 目無し魚の群れ」へとなだれ込んで、いやもう、最後まで血沸き肉躍りぱなしです!!
 ただ、結末はバッド・エンドでありまして、思わず、「晶子よオ〜」とドップラー効果付きで叫ばずにはいられないところが、いやはや何とも…。
 凄い一冊です。

・注1
 「新潮文庫/昭和五十八年六月二十五日 発行・平成十八年三月三十日 三十九刷」

・備考
 状態非常に悪し。ビニールカバー貼り付け、しかし、一部がカバーとともに欠損して、ボロボロ。綴じ穴あり。前の遊び紙、大きな欠損あり。読み癖あり。目立つシミ・汚れあり(特に、pp5〜19)。pp10・11、鉛筆による軽い落書きあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕と書き込みあり。前後の袖、カバーを留めていたセロハンテープの痕あり。pp127〜130、欠落。

2016年6月16日 ページ作成・執筆

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