丘野ルミ「奇談狼少女」(220円)



「満月の夜、日野魔子は、町のど真ん中で狼に襲われる。
 狼は警官に射殺され、魔子の怪我も幸いにして軽かった。
 しかし、この狼は、動物学者、黒百合五郎が、狂犬病の研究のために飼っていたものであった。
 彼はだまっていたら、わかりゃしないと知らんぷりを決め込む。
 だが、彼の娘、咲子は、心優しい少女で、魔子の見舞いに出かけ、二人は以来親友となる。
 魔子が退院して迎えた満月の夜、魔子は自分の身体に異変を感じる。
 身体中に毛が生え、口は耳元まで裂け、牙が剥き出しになり、まるで獣のよう。
 そう、狂犬病の狼に噛まれたために、魔子は「狼少女」になってしまったのであった。
 月光を浴びなければ、身体の変化は収まっていたが、症状は徐々に悪化。
 魔子の異変に勘付いた、彼女の両親は、ある夜、魔子が寝室から姿を消したことに気付く。
 両親が探していると、噛み殺された若い女性の死体があった。
 その女性の死体は魔子のパジャマの切れ端を握っており、また、屋敷の寝室で寝ていた魔子の口元には血が付いていた。
 魔子の両親はこのことを隠そうとするが、黒百合五郎は魔子の父親が会社の社長であることを知り、脅迫する。
 しかし、その報いか、ある満月の夜、五郎と咲子は、狼少女と化した魔子に襲われ、咲子も狼少女となってしまう。
 五郎は、咲子を救うために、薬を作り上げるのだが…」

 丘野ルミ先生が「狼少女」をテーマに描いたマンガです。
 「とかげ少女」の時と同様、今回も、江戸川きよし先生が同じテーマで「狼令嬢」というマンガを描いておりますが、丘野ルミ先生の方が数百倍面白いと思います。(個人差あり。)
 んで、どんな感じのマンガかと申しますと、右の画像のような感じです。
 どうも形容に困るのですが、モンスターが「赤塚不二夫」キャラ特有の脱力感を持ち合わせていると言えば、わかりよいでしょうか?
 この緊張感に欠けた絵で、非常に殺伐としたストーリーを展開されると、ただただ不思議な違和感のみが募ってきます。
 私の抱いた印象としては、丘野ルミ先生は読者を怖がらせよう、怖がらせようと努めて描いたはずなのに、本人の努力と反比例して、「恐怖」とは別の次元に横滑りしていったようです。
 そして、その作品の到達してしまった次元とは、「とかげ少女」でも述べましたが、「無計画極まりない悪趣味さ」だと私は考えております。
 それは、特に、陰惨な描写で存分に発揮され、半世紀経った今現在でも、怪奇マンガ・マニアの魂をくすぐり続けているのでしょう。(オレだけか?)

・備考
 カバー若干痛みあり。糸綴じあり。本文中、切れ、痛み、シミ、多少あり。小口に貸本店のスタンプ押印あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕と貸本店のスタンプ押印あり。

2017年4月9・10日 ページ作成・執筆


 今回は思うところがあり、ちょっと私事について書きます。
 4/8〜10日の間、東京にいる弟の甥っ子達に会うために上京いたしました。
 9日はフリーで、新宿テアトルで公開中の「この世界に片隅に」(10:30am〜)を観に行きました。
 お目当ては、上映後に予定されていた、片渕須直監督と松原秀典・作画監督のトーク・ショーです。
(4/6の0時に、オンラインでチケットが販売されると、すぐに予約を入れました。お陰で、前列から二番目の席を入手できました。)
 トーク・イベント、とっても楽しかったです。
 昔の風俗の細かい部分を調べ上がるのに協力した、前野氏(だったか?)の超絶した個性に圧倒され、30分、あっと言う間に終わってしまいました。
 んで、その後、ミーハーだとは思いながらも、サイン会で片渕氏と前原氏からパンフレットにサインをいただきました。
 と、まあ、単なる自慢話であって、あえて皆様方に聞かせるようなものでないのですが、本題はここからです。
 「この世界の片隅に」を再見しましたが、やはり素晴らしい…を通り越して、凄い映画です。
 ただ、あらためて観なおすと、予算の都合でカットされた部分が気になってしまいました。
 原作を読んでない人には、理解しがたいところが幾つかあるのです。(初見の時の私がそうでした。海外の人なんかどうだろう?)
 そこで、「完全版」を望む次第なのでありますが、そのためには一時的なブームでなく、息の長い支援が必要であります。
 そのためには、まずは「宣伝」して、少しでも作品の知名度を上げねばなりません。
 というわけで、この場を借りて、未見の皆様方に「この世界の片隅に」を激しく推薦したいと思います。
 一人でも多くの人に映画館に足を運んでもらえれば、それが「完全版」への資金となり、また、わざわざ劇場に足を運んだ人も、この映画をつまらないと感じることは恐らくないと、私は思います。(大画面で観ると、やっぱ、いいですよ!!)
 ただ、地方ではどんどん公開は終了していってますが、都会ではまだ上映している映画館は幾つもあります。
 このような拙文でも、何かの拍子に目に留まり、この映画に興味を持っていただければ、これ以上は望みません。
 実際、私がこの映画に興味を持ったのは、今年の三月頃、部屋の掃除をしていた時、約一年前に、とある人からもらったパンフレットが出てきたのがきっかけでありました。
 これは単なる偶然でなく、私にとっては運命の出会いであったと信じております。(肉体労働と古臭い怪奇マンガだけが日々を占めていた私にとって、目からウロコが落ちる体験でありました。)
 ですから、私も、微力ながら、種を撒くことにいたしましょう。
 ただし、丘野ルミ「奇談狼少女」の紹介文の下で、種を撒いても、どれほどの実りがあるのかどうか、謎ですが…。

東京漫画出版社・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る