いばら美喜・他「怪奇マガジンB」(220円)



 収録作品

・いばら美喜「老木」
「秋の日曜日。
 隆志と清美は、ドライブの途中、新道路ができたために見捨てられた街道を通る。
 あまりの悪路のため、車が故障してしまい、隆志は町まで修理工を呼びに行く。
 清美は、道のそばにある松の枯れ木の根元で、彼の戻りを待つ。
 すると、彼女の背後に、いつの間にか、痩せ細った老人が現れ…」

・及川じゅん「暗い中」
「身寄りのない英子を世話していたおじが亡くなる。
 彼はどケチで悪名高かったが、遺産は二千万円。
 だが、遺書はなく、金は屋敷のどこかに隠されているらしい。
 三人の息子達は、父親が死んだばかりなのに、遺産探しに没頭する。
 ある夜、主人の部屋で、その一人が急死する。
 最後の言葉は「ゆうれい…」で、医者によると心臓麻痺らしい。
 また、英子の友人、進は、おじらしい人物を窓の外に見かけていた。
 次の夜、同じ部屋で、また一人亡くなる。
 部屋の外では二人いて、少し目を離した間の出来事であった。
 真相を探るため、進と英子はその部屋で夜を過ごすのだが…」

・「お通夜の客」(本誌のために描き下ろし)
「お通夜をしている家を、ある男が訪れる。
 彼は通りすがりの者で、泊まるところを探していた。
 お通夜をしていた連中は、彼にお通夜を任せて、帰ってしまう。
 男が臆することなく、酒を飲んでいると、死体が起き出してくる。
 死体は「うらめしい…」と男に迫るのだが…」
 「おこつ狂騒曲」にも収録されております。

・「鍵」(本誌のために描き下ろし)
「砂漠を北に進む一台のジープ。
 車には二人の男が乗っている。
 一人はこの計画の発案者で、もう一人は金庫破りの達人。
 計画の発案者の男は、一週間、同じ夢を見ていた。
 夢では、「インカビオスの像」が現れ、太陽が西に沈む頃、像の影の指先が示す地点に、財宝が隠されていた。
 しかし、宝箱を開ける鍵がないので、金庫破りの男を連れてきたのである。
 夢で見た通り、彼らは「インカビオスの像」を発見する。
 だが、そ宝の在処を掘ろうとした矢先、彼らは流砂に呑まれてしまう。
 二人が目を覚ますと、そこは地下の洞窟で、金銀財宝の山があった。
 発案者の男は、金庫破りを殴って気絶させ、財宝を独り占めにしようとするのだが…」
 「おこつ狂想曲」にも収録されております。

・直木征「半人間」
「純、山田、オミツ(光子?)の三人はドライブの途中、山中で迷う。
 進んでも進んでももとの道に出て、どこを走っているのか全くわからない。
 彼らは、崖の上に、半分人間で、半分が猿のような動物を目にする。
 その半人間が遠吠えをすると、鳥の大群が車を襲ってくる。
 どうにか逃れたものの、車がガソリン切れになる。
 車を降りて、歩き始めた時、半人間が遠吠が聞こえ、ムカデの大群が現れる。
 逃げている途中、彼らは半人間を見かける。
 半人間が気付いてない隙をついて、純は背後から半人間を襲い、右手を噛まれながらも、殺す。
 その時、横山という木こりが現れる。
 彼によると、この森は「ふしぎの森」で一度入ったら、出られないらしい。
 とりあえず、四人はキャンプを張って、夜を過ごすのだが…」

 いばら美喜先生、滝田ゆう先生の作品は小粒ながら、キラリと光る名編です。
 及川じゅん先生「暗い中」は駄作です。
 死んだ主人の「ゆうれい」の謎が放置されたままというのは、ミステリーとして問題ありです。
 直木征先生「半人間」は個人的に最も心惹かれる作品です。
 若い男女が「ふしぎの森」で半人間に襲われるというB級ホラーみたいな内容で、心にしっとり馴染みます。
 惜しむらくは、絵が発達途上でありますが、作者のチャレンジ・スピリットを買いたいと思います。

・備考
 非貸本。経年の割にキレイ。

2021年8月25日 ページ作成・執筆

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