月宮よしと「妖忍」(220円)



 収録作品

・月宮よしと「妖忍」
「仙石藩。  ある姉弟が藩の家老に面会を求め、士官を願う。
 二人は姫児・午児という名の双生児で、姉は唖で、弟は怪物のような異様な外見をしていた。
 午児によると、二人は「二体一心」で、片方の心気が片方の剣技に作用し、連携プレーで戦うという。
 だが、家老は二人を片輪者呼ばわりし、城を追い出す。
 この扱いに怒り心頭の姉弟は、城の剣客を次々と殺していく。
 この姉弟の技とは、姉が木の枝に登って、その太股や乳で相手を悩殺し、その間に地中に潜った弟が相手の股間を切り落とすというものであった。
 家老は多勢でもって姉弟を討ち取ろうと考えるが、十鳥源之進が一計があると討手を申し出る。
 源之進は、家宝の「女殺しの陣太刀」を手に姉弟の住処に向かうが、この「女殺しの陣太刀」の威力とは…?」

・月宮よしと「猪武者」
「筑後の柳川に、「猪武者」とあだ名される足達茂兵衛という侍がいた。
 あだ名の由来は、若い頃、猪を飼っていたからで、その名の通り、学問は受けずに武辺一本に育った、粗暴な男であった。
 ある日、彼は、友人の渡辺小十郎と共に、正平という新興宗教の教祖の祠堂を襲撃する。
 正平は「野狐の化人」と称し、邪教を広め、民衆から暴利を貪っていた。
 茂兵衛と小十郎は祠堂を破壊し、正平を領内から追い出すが、その際、正平と関係があった、藩の家老が裸の女数人と寝床にいる場面に遭遇する。
 スキャンダルになることを恐れた家老は、渡辺小十郎が隣藩に逃亡しようとする知らせを受け、彼の暗殺を目論む。
 暗殺計画を記した手紙は一度は、茂兵衛の手に渡るものの、字が全く読めないために、結局、小十郎の暗殺を許してしまう。
 後日、家老の屋敷での、武具あらための際、茂兵衛が持ってきたものとは…?」

・月宮よしと「易占奇談」
「伊勢屋の主人は占い師から、本日の子の刻三更に死ぬと告げられる。
 さすがに気味が悪く、その日は早く用事を済まして、家に戻り、酒を飲みながら、占い師の告げた時間を待つ。
 実は、彼の妻は当の占い師と内通しており、腹には彼の子供まで宿していた。
 子の刻、伊勢屋の主人は妻の落ち着かない様子を不審に思い、押し入れに隠れていた占い師を発見する。
 争ううちに、手相見は主人を扼殺してしまい、占い師と伊勢屋の妻は逃亡する。
 二人は新しい地で商売を始めるも、うまく行かず、やがて産まれた子供は、殺した主人の面影があるように占い師には見える。
 嫌気のさした彼は妻子を捨て、別の女と逐電するが、それから、二十年後、近江の国。
 一人の侍が道端の占い師に占ってもらうと、占い師は、侍が翌亥の刻二更までに人を殺すと告げる。
 その占いの結果とは…?」



・滝田ゆう「しゃばっけ」
「強盗殺人を犯して、奉行所に捕らえられた男。
 死ぬのなんか全く怖くなく、一日千秋の思いで、仕置きの日を待つ。
 だが、彼の意に反して、なかなかお呼びがかからない。
 ようやくその日が来たかと思いきや、理由のわからぬまま、「嘘、釈放?」(by「空耳アワー」)されてしまう。
 後日、彼は、同じ牢仲間だった宗介と再会するのだが…」
 滝田ゆう「おこつ狂騒曲」にも収録されております。

・橋本将次「俺は莫迦」
「越後長岡藩士、牧村秀之進。
 彼は兄と共に、父の仇を討つべく、故郷を出て苦節六年、今は備後福山の城下町の宿に滞在していた。
 しかし、いまだ仇敵は見つからず、資金は底を尽き、兄は労咳で寝たきりの身。
 宿代を捻出するために仕方なく、秀之進は兄の刀(肥後の宗晴)を売りに刀剣屋に出向く。
 そこで、彼は仇敵の高山弥九郎らしき人物と出会う。
 秀之進は、本人にじかに会ったことはなかったが、年恰好、名前等、兄の説明通り。
 その夜、秀之進は夜道で高山弥九郎らしき人物を待ち伏せし、果たし合いを挑む。
 だが、相手は、自分は高山弥九郎ではないと否定し、にべもない。
 痺れを切らした秀之進は問答無用で相手を切り捨てる。
 これで故郷に帰れると兄のもとに帰るが、兄は宿でこと切れていた。
 更に、奉行所で取り調べを受けているうちに、彼の当初の喜びは瓦解していく…」

 月宮よしと先生、滝田ゆう先生、橋本将次先生といった渋い作家の作品が五編、収録されております。
 怪奇色があるのは「妖忍」と「易占奇談」だけでありますが、表紙に「異色時代傑作」とある通り、どの作品もバラエティに富んで、面白いです。
 個人的なベストは、お色気と奇想の入り混じった「魔剣もの」の「妖忍」。
 これって原作があるのかなあ?

・備考
 パラフィン紙の剥がし痕あり。糸綴じの穴あり。後ろの見開きに貸本店の紙貼りつきとスタンプ押印。

2019年8月20・21日 ページ作成・執筆

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