「怪談R」(150円/1960年頃?)
収録作品
・古賀しんさく「奇妙な死」
「貧乏生活に疲れた彫刻家、鉄田。
彼が青酸カリで自殺を図ろうとした時、彼をモデルにした粘土像が話しかけてくる。
粘土像は彼の自殺を止め、大金を作る方法を教える。
それは粘土像がアリバイを作る間に、強盗をするというものであった。
ちょうど翌日、鉄田は友人達と誕生パーティをすることになっており、鉄田は乗り気になる。
ただ一つ、酒を飲むと、粘土像は溶けてしまうので、鉄田は粘土像の腹部に瓶を埋め込む。
翌日、鉄田は強盗殺人を犯して、大金を手にし、粘土像のおかげでアリバイもばっちり。
欲を出した鉄田はもう一度、粘土像にアリバイを作ってもらい、強盗を働く。
粘土像はアリバイのために、隣に住む男の子と公園に出かけるのだが…」
・小島剛夕「道成寺」
「雨の降る日の夕刻。
僧見習いの吉弥は、上野寛永寺で、雨宿りしている、美しい娘、清姫に出会う。
彼女は足を挫いており、吉弥は彼女を送るが、そこは、立ち入りが厳禁されている五輪塔のある場所であった。
その宝塔は、江戸城が開城した頃、何百という鶴が犠牲になったことから、輪王寺宮が供養のために建てたもので、たった一羽のみ残った姫鶴がたまに姿を現すという。
吉弥は清姫の美しさを忘れることができず、ある夜、禁断の門をくぐる。
二人は再会し、互いの身分が違い過ぎることを知りつつも、夜毎、逢瀬を重ねる。
しかし、このことを慈海上人に知られ、吉弥は、清姫の正体を知らされる。
吉弥は、清姫との別れを決意して、雲水として旅立つ。
彼は、紀州熊野権現道成寺にて修行を積むこととなるが、冬のある日、清姫が寺の門前に、吉弥との面会を求めて、訪れる…」
・サツキ貫太「幻の船」
「正は、周囲から嘘つき呼ばわりされていた。
何故なら、山中に、父親が遭難した第一つばめ丸の姿を見えると主張するからであった。
黒瀬は、偶然に正のことを知り、不思議に思う。
十年前、黒瀬は、保険金詐欺に加担し、第一つばめ丸に時限爆弾を仕掛けた犯人であった。
ある夜、黒瀬は、別荘が火事と聞き、急いで現場に向かう。
途中の山道で、正の姿を見かけ、黒瀬は彼の後を追う。
すると、第一つばめ丸が再び黒瀬の前に現れる…」
・山下よしお「乙女雪」
「明治時代。
職人の娘、晴(はる/十七歳)は白川男爵の屋敷で小間使いとして働いていた。
彼女は夫妻に目をかけられ、夫妻の娘、琴絵の世話をするために、向島の別荘を訪れる。
琴絵は心も顔も美しい娘であったが、小児麻痺を患ったために、下半身が不自由であった。
晴は琴絵に甲斐甲斐しく尽くし、琴絵も晴を頼りにする。
晴は、琴絵が想いを寄せる大木をなるべく呼び寄せようと努めるが、彼には洋行の話が持ち上がっていた。
洋行に出かける前に、晴は彼に会い、琴絵に託された立雛を渡そうとする。
だが、彼は晴への想いを打ち明け、彼女にこの立雛を持っておくよう頼む。
節句の日、琴絵は、渡しそびれた立雛を見つけ、晴に裏切られたと絶望する。
彼女は川で溺死して、彼女が胸に抱いていた立雛からは目が消えていた…」
・浜慎二「鬼畜」
「原因不明の白骨病。
それは、元気だった者が、急に痩せ衰え、二三日のうちに、白骨化してしまうという奇病であった。
テレビドラマの脚本家、横島だけはその秘密を知る。
白骨病の原因は、都会の片隅にいる老乞食で、彼に金を与えた者は必ず白骨病になるのであった。
横島はドラマの材料にするために、この秘密を誰にも話さず、老乞食を観察する。
しかし、あるきっかけから、彼がこの秘密を知っていることが老乞食にばれてしまう…」
個人的に興味深かったのは、古賀しんさく(新一)先生「奇妙な死」。
粗筋を読めば、想像がつくかもしれませんが、星新一先生のショート・ショートの名編「ボッコちゃん」が元ネタです。(オチも一緒。)
「ボッコちゃん」って、そんなに昔に書かれたものだったのか…。
備考
カバー欠(掲載の画像はコピーによるもの)。非貸本らしく、見返しに割れがあったりするものの、状態比較的よし。
2019年12月26日 ページ作成・執筆