「怪談・40」(1961年11月頃?/160円)
収録作品
・浜慎二「風は知らない」
「真面目で誠実な兄に、ヤクザな弟、そして、白血病で余命いくばくもない、年の離れた妹。
兄がデパート等をいくつも経営する一方、弟はしがないトラック運転手。
兄の財産に目をつけた弟は、兄が登山に行った際に、遭難させようとザイルに細工。
弟の思惑通り、兄は雪山で遭難する。
雪で方向を見失い、行き倒れた兄の目の前に、家で寝ているはずの妹の姿が現れる…」
上手いです。
小島剛夕と並ぶ、「怪談」の看板作家の一人だった実力は半端でありません。
まとまりがよく、安定している分、いばら美喜先生や古賀新一先生に代表される「ブッ飛び感」は希薄ですが、この完成度は今でも充分、通用するように思います。
「オール怪談・72」(ひばり書房)にて再録。
・北三平「鬼ユリの咲く頃」
「とある北国に、百眼という大熊が現れる。
親友を百眼に殺された青年は、仇をとろうとするが、百眼を殺すのは非常に困難だった。
その青年の前に、加六爺さんと名乗る老人が現れ、百眼の住む灰色峡谷に行くよう勧める。
そして、灰色峡谷には、鬼ユリというマタギがいて、信じれば、現れると言う。
ただ、鬼ユリは三年前に百眼に首を叩き落とされて、死んだはずだった。
半信半疑ながらも、青年は灰色峡谷を訪れる…」
この作品も悪くないです。
鬼ユリのキャラが明らかに白土三平先生が入っていますので、マタギものというより、忍者ものの匂いがあります。
模写でしょうが、動物も頑張って描いておりますので、安直な雰囲気を感じさせません。
捨てがたいですね。
・落合二郎「妖面記」(1961年10月制作)
「二軍から一軍にどうにかして戻ろうと考える野球選手。
しかし、彼にはライバルがいた。
とある夜、呪いの鬼面をつけたものが殺人を犯す映画を観た帰りに、彼は夜店で同じような鬼面が売られているのを目にする。
夜店の親父に聞くと、この鬼面を手に入れたものは、数日のうちに不幸に遭うという。
彼は鬼面を手に入れ、ライバル選手にこれをプレゼントする。
そして、一軍に戻るためのテストに臨むが…」
ストーリーを一捻りしておりまして、もう少し練れば、佳作となったでしょう。
・小島剛夕「夢の池」
「知人の葬式の帰りに、死というものに思いを馳せる若い武士。
彼はその夜、夢を見る。
蓮池があり、その向こうに門がある。そして、門には美しい御女中が出迎えに来ている。彼女に案内されて、中へ進むと、突如、暗い深淵に落ちこむ…というものだった。
その風景がどこかはわからないが、見覚えはあり、彼は勤務もほどほどに、その蓮池を探索する。
その間に夢で見た御女中に対する思慕を深めていくが、また彼は同じ夢を見る。
しかし、今度の夢では、門の中には、彼の亡くなった父母や親族の姿があった。
門の向こうは、死の世界でないだろうか、と彼は考え始める…」
備考
糸綴じあり。表紙に折れあとあり。pp41・42下部に欠損あり。
平成26年8月22・24日 ページ作成・執筆