「怪談・42」(160円)
収録作品
・いばら美喜「くたびれ儲け」
「二人組の男が、帰宅途中の看守を拳銃で脅して、拘束する。
彼らは、死刑執行を目前とした、ギャングのボスの子分たちであった。
看守から、ボスの死刑が明日であることを聞きだし、子分たちはボスの脱獄作戦を実行に移す。
子分たちは、十日かけて、ボスが収監されている部屋の下まで、トンネルを掘っていたのであった。
脱走作戦は成功し、看守も射殺して、ギャング達は逃亡する。
しかし、予想以上に早く手が回り、切羽詰まった彼らの前に一人の男が現れる…」
ぶっとんだ話を、最後のコマのセリフでさらりとまとめるのは、いばら美喜先生の得意技ですが、この作品も非常に上手いです!!
粗筋だけを読んだら、単にヘンな話にしか感じないでしょうが、マンガで読むと、妙な感心をしてしまうぐらい、うまくまとまっております。
でも、やっぱりヘンな話なんですがね…今だったら、ブラックなギャグマンガとしても充分、通用するかもしれません。そのくらい、幅のある作品であります。
「怪談・100」にて再録されております。
・小島剛夕「花の命は短くて」
「時は治承(1177〜1181年)、世は平家盛んなる弥生三月。
西八條邸にて、平清盛は花見の宴を催す。
宴の最後を飾ったのは、見知らぬ曹司(注1)の舞う春鶯囀(しゅんおうてん)で、人々はその美しさに息を飲む。
舞の後、ふとしたきっかけから、武士の八郎は、彼女と知り合うこととなる。
お付きの女房から、彼は、彼女が、最近、御所に上がった、若水という曹司であることを聞き、以来、彼の心を若水の面影が離れることはない。
思いのたけを伝えるべく、手紙を幾つも書くも、「読んでくれたか、読まずにいたか、梨のつぶての音沙汰なしで〜」(注2)、彼は、二人を分かつ権門の、また、掟の壁に絶望する。
ある日、そんな彼の前に、一人の坊主が現れたことをきっかけに、彼は想いを断ち切るべく、仏門へと入る。
その噂を聞き、若水は、自分の心を明かす決心をするのだが…」
高山樗牛(たかやま・ちょぎゅう)「滝口入道」(未読)が下敷きのようですが、詳細は不明です。
・北風三平「虎を食う男」
「一介の浮浪者から、十年で大原財団を築き上げた大原虎吉。
彼がここまで成功したのは、虎の神(万物の神だが、動物園の虎の姿を借りている)によるものであった。
だが、成功と引き換えに、三十歳の誕生日に彼は死なねばならない。
虎の神は、彼を虎に食べられて死ぬと告げ、彼は神に邸に虎を連れてくるように言う。
だが、彼は、助かろうと、一計を案じていた…」
ラストは多分、いばら美喜先生の「パパはお金持ち」(「オール怪談・43」収録)にインスパイアされたように思います。
・古賀しんいち「お母ちゃん どこにいるの」
「岩田正一という坊やは、自動車のセールスマンの母親と二人暮らし。
ある時、彼は、交通事故により記憶喪失にかかってしまう。
母親、近所の女の子、会社のおじさん、祖父といった人達のことはおろか、自分の名前さえ思い出せない。
彼は毎日かかさず病院に通っていたが、ある日、電気ショック療法を受けた際、睡魔に襲われ、眠ってしまう。
目覚めると、今まで彼の周りにいた人々が消え、誰も彼のことを知らない。
彼は、自分を知ってそうな人を探して、思い当たる場所を次々と訪れるのだが…」
・注1
岩波古語辞典によると「@宮中や貴族の邸内にある女官・官人などの宿所・部屋」とのこと。
・注2
ドリフターズ「八木節」より。
名曲やね。
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり。カバー痛み、ひどし(背表紙の上下、欠損)。糸綴じあり。前後の見返しに紙テープで補強。p1、遊び紙にくっついて、一部剥げ。p1、鉛筆でぐるぐる落書き。小口、前後の見返しに貸本店のスタンプ押印。
2020年4月8日 ページ作成・執筆