「怪談・45」(1962年3月頃?/170円)
収録作品
・いばら美喜「一ぱいの水」
「夜道、老人が暴走車にひき逃げされる。
が、老人はかすり傷で、魔術で車を破壊、運転手と同乗者も命を失う。
その後、水を求める老人に、通りがかりの女学生が水を与える。老人は魔術を使った後は、水を飲まないと命取りになるのだった。
喫茶店で、老人は女学生に、一人息子をひき逃げで亡くし、以後、ひき逃げは絶対に許さないということを話す。
すると、女学生は、母と妹をひき逃げされて亡くした青年を老人に紹介する。
老人は青年の復讐に一肌脱ぐが…」
・小島剛夕「浦島」
「とある漁村の浜辺で、子供達に浦島太郎を物語る老爺。
子供達は彼を本物の浦島太郎だと思う。
老爺が青年だった頃、彼は流れ着いた唐(もろこし)人を助けた。
その唐人は唐の姫君の家来で、名を万亀(ばんき)。彼の話によると、その姫君は日程にして二日程の所にある島に住んでいるという。
青年はその唐人と共に島を船をこいで訪れる。そこには豪華絢爛な城が建てられ、美しい姫が彼を歓待してくれる。
いつしか姫と青年は恋に落ちるのだった…」
素晴らしい!!
竜宮城で鯛やヒラメの踊りを見せられるのかと思いきや、浦島太郎が訪れるのは、唐土(もろこし)のお姫様が住まう小島という設定。
藤巻一保氏によれば、「日本のあの世は、海の彼方や奥山のむこうなど《平面状の彼方》にあるものと考えられてきた。こうした平面状にあるあの世とは、その気になれば、歩いたり泳いだり舟に乗ったりしているうちに、いつか行き着くことができる場所」であるとのことです。(注1)
となると、伝説上の海の底にある竜宮城よりも、海の彼方にある唐土(もろこし)の方が遥かに現実味があります。
また、絵本などでお馴染みの乙姫様の衣装風俗もこれで十二分に説明できるような気もします。
「竜宮≒唐土」が小島先生による新解釈なのか、他に原作があるのか、さっぱりわかりませんが、一般的な昔話としての「浦島太郎」を刷り込まれてしまっている私達には、意外と斬新に感じられるんではないでしょうか?
・落合二郎「夜霧の誓い」(1962年2月頃、完成とのこと)
「小さな劇団で、踊り子をしている少女。
彼女には親しくしていた青年がいたが、彼はヤクザだった。
青年はヤクザから足を洗い、関西で堅気になって戻ってくると言って、東京を去る。
その後、少女に映画出演の話が出てくるが、劇団への借金へのかたとして少女をナイトクラブで働かせようと暴力団が脅しをかける。
少女がならず者どもに拉致されようとするその時、青年が戻ってきた…」
話自体は嫌いでないのです。絵も、今現在からすれば稚拙に見えるでしょうが、味があると言えば、味があると言えましょう。
ただ、ゴテゴテしたドレスやバレーの衣装等、少女マンガちっくな描写が、あまりに不自然で、作者の苦労を感じます。
・北風三平「白骨投手」
「舟で暮らす、年配の母親と、その息子の青年。
母親が死神(ドクロに大鎌という基本スタイル)に目をつけられるが、どうも元気で付け入る隙がない。
そこで、死神は野球好きの青年をプロ野球選手にしてやろうともちかける。
しかし、彼がプロ野球選手になり、ホームランを連発するようになってから、母親は体調を崩し出すのだった…」
北風三平先生の作品はわりと面白いマンガが多いのですが、これはイマイチです。
内容が行き当たりばったりで、支離滅裂です。ちょっと残念…。
・注1
藤巻一保「江戸怪奇標本箱」(柏書房/2008年2月10日第一刷発行)34ページより引用させていただきました。
・備考
カバー欠。つじ糸あり。
平成26年9月24・25・27日 ページ作成・執筆