「怪談・51」(170円)



 収録作品

・浜慎二「趣味」
「金のない平社員の青年。
 日曜日、散歩をしていると、ケチで有名な課長が別荘を買うために郊外に出かけるところであった。
 課長に同行すると、人気のない寂しい土地に、恐ろしく古風な屋敷があった。
 青年が外から様子を窺っていると、課長は代金の前金として50万円を屋敷に住む老婆に渡す。
 その金を老婆は札束のぎっしり詰まった箱の中にしまう。
 帰りの電車で課長に話を聞くと、この老婆は大金持ちで、屋敷を売った後は、死ぬまで老婆を置いておくという契約なのであった。
 だが、帰宅途中、青年と課長を乗せたタクシーが事故を起こし、課長は即死。
 青年はこの屋敷を手に入れるため、大金を借金して、屋敷を手に入れる。
 ただ、一つ誤算があった。
 この老婆が見た目以上に健康で、いつまで経っても死にそうにないということ。
 借金の返済が迫り、切羽詰った青年は最後の手段に打って出るが…」

・小島剛夕「たけくらべ」
「僧侶の家に生まれた真如と、女郎の運命に生まれた美登利の結ばれぬ恋を描いた物語」
 五千円札の顔でお馴染み、樋口一葉(注1)「たけくらべ」なのですが、すんません、私、読んだことないです。
 というより、古文というか、雅文というか、あの手のものに全く歯が立ちません。(「たけくらべ」は雅俗文調らしいのですが、詳細は不明。)
 切れ間なくダラダラ文章が続いていると、段々ワケがわからなくなってくるんですよね。
 まあ、野坂昭如の小説のように、うまく精神を文章に同調させれば、面白く読めるのですが、最近、そこまで集中力が続かない…。
 という訳で、小説通りかどうかは私にはわかりかねます。
 とりあえず、怪奇マンガでないことは確かです。

・北風三平「トランク」
「試合で片耳の聴力を失い、ボクシングをあきらめた青年。
 彼が公園のベンチで昼寝から目覚めると、ベンチにトランクが置き忘れられていた。
 公園で人を待っていた男のものと気付いたが、青年はトランクを部屋に持って帰る。
 トランクの中は札束がぎっしり詰まっており、青年は借金を返し、バーで豪遊。
 だが、部屋に帰って、トランクの中身をよくよく見ると、札束に交じって、人間の手足だけのバラバラ死体が入っていた。
 青年は死体を梱包して、川に捨てに行く。
 しかし、部屋に帰ると、いつの間にか、トランクの持ち主の男の頭部や胴体がトランクに入れられていた。
 青年はそれも川に遺棄するのだが…」

・古賀しんさく「吸血鬼」
「安く間借りできるというので、田舎の寂しい屋敷を訪れる青年。
 不動産屋が言うには、その屋敷の持ち主はかなり変わっているらしい。
 青年が、屋敷が留守だと思い、適当に部屋を覗いていると、奇怪な絵を目にする。
 絵には、痩せこけた男と、その男の首から血を吸う男が描かれていた。
 そこに、屋敷の主人の老人が現れ、その絵にまつわる奇妙な話を語る。
 絵の痩せた男は、老人の兄で、この屋敷の持ち主であった。
 四十年前、兄の妻が、人を襲って、血を吸う奇病にかかり、兄の一家は都会からこの地へ引っ越す。
 しかし、妻の病状はよくならず、何人もの人を殺めたために、刑務所に入れられ、まもなく変死。
 また、兄も五年後に病死して、弟は、孤児となった幼い男の子の世話をすることとなる。
 男の子は、亡くなった父親のことが忘れられず、その絵の前から動こうとしない。
 そして、父親を慕うあまり、男の子は絵の中に入り込んでしまう。
 絵の中の男の子は、時が経つにつれて、成長していき、気味悪く思った弟は絵を見ないようにする。
 数十年経ったある夜、肖像画のある部屋から人の声が聞こえてくる。
 弟が、久方ぶりにその絵を目にすると、男の子は大人へと成長していたが…」

 扉絵と浜慎二先生の「趣味」は「オール怪談増刊」にて再録。

・注1
 五千円札を見る度に「スケキヨ、仮面をめくっておやり!!」のセリフが脳裏をよぎります。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。つじ糸あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕や書き込み、スタンプ押印あり。

2017年10月22日 ページ作成・執筆

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