「怪談・56」(発行年月日不明/170円)



 収録作品

・いばら美喜「夜にはばたく」
「何の因果か、翼が背中に生えた男。
 彼はこの翼を利用し、殺し屋として名を挙げる。
 彼の秘密を知る医者を殺害するが、医者の娘が復讐に乗り出す。
 殺し屋の弱点とは…?」
 白黒のフランス映画で、羽が生えた男を主人公にしたものがあったような気がします。一応、コメディーだったと思うのですが、大して面白くなかった記憶が…。
 それが元ネタというわけでもないんでしょうが、「翼の生えた殺し屋」という妙ちくりんな設定は私が知る限り、これしかありません…。

・小島剛夕「糸柳 こころあらば」(注1)
「春の初めの紀州(現在の和歌山県)熊野権現。
 鷹狩の鷹が糸柳に絡まり、侍達がその糸柳を切り倒そうとする時に、どこからかうら若き乙女が現れ、木を切らないよう請う。
 そこに、弓術に優れた青年が現れ、見事、鷹を糸柳より解き放つ。
 青年はその時の功により領主に取り立てられるが、乙女の面影が忘れられない。
 有為転変して、戦で傷き、死にかけた青年の前に、あの時の乙女が現れる…」
 木の精との恋愛を描いた幻想譚。
 こういう作品、好きなんです。

・古賀しんさく「死人の世界」
「ある科学者は、死人の世界を研究していた。
 彼は、人が意識を失っている間、魂が死人の世界に行っていると考える。
 そこで、自分の息子を実験台にして、死人の世界を探ろうとする。
 意識が戻ると、全て忘れてしまうのを防ぐ為、特殊な手術で魂に特別な記憶力をつけてから、青年は死人の世界を訪れる。
 そこはほとんど現世と変わらず、一つの大きな建物には、現世では意識を失っている人達が大勢集まっていた。
 恋人もでき、浮かれる青年だが、本当の死人の世界から、現世からあの世のことを探りにきたスパイを捕らえる為の一行が現れる。
 そして、青年を含め、現世で意識を失っている人間は皆、拘束され、現世に戻れなくなってしまう…」
 う〜ん、ヘンな話…。
 でも、シルバー・バーチによると、人間は寝ている間、魂はあの世に訪れているという話です。(ほとんど忘れてしまうそうですが…)
 それを考えると、なかなか鋭い着想ではないでしょうか?

・北風三平「石の男」
「愚連隊に誘拐されたまま、行方のわからなくなった恋人を想い、いつもの待ち合わせ場所にたたずむ青年。
 青年の前に、謎の男が現れ、彼女のもとに案内するという。
 彼と共に訪れたのは、人気のない倉庫。
 そこはマフィアのアジトだった。
 地下室に案内されると、青年の恋人は死体となって、ドラム缶の液体の中に沈んでいた。
 怒りに燃える青年だが、二人をマフィア連中のマシンガンが狙う…」
 いばら美喜先生ほど、うまくはありませんが、北風三平先生もなかなかの水準の「アクション怪奇もの」を描いております。
 この作品も悪くありませんが、落ちがちょっと苦しいかも…。
 個人的な印象ですが、いばら美喜先生の影響を多大に感じます。特に、アクション・シーンは、大傑作「焦熱地獄」(注2)とよく似てます。
 それと、ドラム缶の中に沈められた女性の死体の描写は妙に陰惨です。世間を騒がせた、残忍な事件の数々を連想させるからでしょうか?

・注1
 目次では「糸柳」となっておりますが、マンガのタイトルでは「糸柳こころあらば」になってますので、そちらに合わせました。

・注2
 菊地秀行・編「貸本怪奇まんが傑作選 妖の巻」(立風書房/1991年7月10日発行)に収録。
「怪談」シリーズでも、いばら美喜先生のベスト5に入る傑作だと、個人的には思います。(全作品を読んだわけでないので、断言はできませんが…。)

・備考
 カバー貼り付け。つじ糸あり。背表紙、色褪せに上部破れとマジックによる落書き、下部にテープ補修。表紙を開いたページにボールペン等による落書きあり。pp33・34、pp47・48上部に破れあり。小口を緑に塗っている。

平成26年10月10・13日 ページ作成・執筆

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