「怪談・68」(1964年6〜7月?/200円)
収録作品
・小島剛夕「美の化身」(注1)
「偏屈者で知られる、老年の彫刻家。
彼は、ミロのビーナスを見て、取り乱す。
我に返った彼が、自分の甥にした話は、彼の若かりし頃の悲恋の物語。
彼は青年の頃、「つきつめた美」を追求していた。
湯治場近くで出逢った若い乙女に彼は「憂愁の美」を見出す。
モデルになるよう彼女に頼むものの、彼女は諒としない。
彼女が望んでいたものは…」
・浜慎二「巨大都市」
「人もうらやむ大企業に勤める青年。
青年の前途は安泰に見えたが、重役だった親戚が亡くなってから、雲先が悪くなる。
一人でも重役候補を蹴落とそうと、とある課長の悪事を調べ出すものの、向こうは逆に青年の過去を知っていた。
青年は実は戦災孤児で、不良になっていたが、とあるトラブルに巻き込まれた重役を助けたのを機に、彼の親戚として会社に入ったのだった。
課長は彼の過去を暴露しない代わりに、自分の悪事も黙っておくよう要求してくるが…」
怪談でなくて、スリラーです。
絵柄が古いので、推測ですが、「黒猫」に載っていた作品の再掲載ではないでしょうか?
幅広く、様々なジャンルで水準以上の作品を多々産み出された浜慎二先生ですが、私は怪談物が一番好きだな〜。
・サツキ貫太「見えない影に」(1964年1月頃描かれた模様)
「先祖が殿様の家老だった青年。
彼のもとに謎の老人が現れ、彼の親戚の女性が生まれ故郷に帰らないよう忠告する。
彼の親戚の女性は、先祖が殿様で、その殿様は冤罪である腰元を手討ちにしていたのだった。
その呪いが子孫である彼女に及ぶことを青年は知るが、彼女は生まれ故郷へと行ってしまう。
彼女の後を追う青年だが、そこで意外な事実が明らかになる…」
ちょっとわかりにくいとは言え、ストーリーはいいのです。
が、どことなくギクシャクした絵柄、キリッとした目付きながら視点の定まらない主人公、可愛いのか可愛くないのかよくわからないヒロイン…が気になって仕方がありません。
味わい深いです。この頭を抱えてしまいそうな魅力をどうしたら活字にできるのか、私にはわかりません。
・藤沢二郎「奇眼」
「現金輸送車から現金を強奪した、隻眼の青年と黒いスーツの兄貴分。
二人は逃亡の途中、仲間割れを起こし、隻眼の青年は邪魔っけな兄貴分を射殺。
しかし、山中で車がエンコしてしまい、青年は空き家を隠れ家にしようと決心する。
が、空き家に向かおうとすると、家は消えてしまい、そこに頭蓋骨が一つ。
その頭蓋骨には片目に義眼がはまっていた。
その頭蓋骨からのテレパシー(?)に言われるまま、青年が義眼をはめると、ひどい頭痛に青年は意識を失う。
気がつくと、彼は江戸時代に存在した風魔一族の忍者となっていたのだった…」
え〜と……ワケのわからないマンガです。
スリラーと忍者ものを無理矢理に配合させたような具合でして、ラストも納得できるようなできないような…。
作者も聞いたことがなく、絵もかなり素人っぽいので、もしかすると、新人作家の持ち込みだったのかもしれません。
・注1
表紙や目次では「美の化神」となっておりますが、作品のタイトルでは「美の化身」となっておりますので、こちらを採用しました。
・備考
ビニールカバーあり。ホッチキスによる綴じあり。
平成26年10月20・21日 ページ作成・執筆