「怪談・69」(1964年7月頃?/200円)
収録作品
・小島剛夕「あゝ特別攻撃隊」
「昭和二十年。沖縄戦たけなわの頃、若者達は特攻隊として悲惨な戦いを繰り広げていた。
白虎隊だった曽祖父を持つ青年は、出撃する前に、両親を訪ねる。
彼は父親から曽祖父の刀を授かり、「武門に恥じぬ立派な死に方」をするよう言われる。
そして、互いに心から想い合う女性にも会う。嘆く彼女に「生きて還ってくる」と約束する。
が、出撃した後、生きて還れぬ事実の前に取り乱す青年。
その時、彼の手もとにあった刀が青年に「死を見つめるのだ……心を乱して死んではいけない………」と思いを伝える。
それは彼の曽祖父からであり、曽祖父の過去を青年に伝えるのだった…」
小島剛夕先生には珍しい太平洋戦争ものですが、基本は白虎隊の話です。(注1)
ただ、私は白虎隊には何の興味も共感も感じませんので、イマイチでした。
と書くと、目くじらを立てる方がおられるかもしれませんので、ついでに書いておきます。
私、戦争を知らない世代ですが、特攻隊に関しては、大なり小なり共感を抱きます。
が、アメリカ人にしてみれば、英雄行為から程遠い、ただのキチガイ沙汰でしかなく、その考えは私も理解できます。
こういうものは「敗者側から見た美学」でしかないのです。
その点をわきまえず、「美学」を史実と同一視しようとする傾向が、気持ちはわからないではないものの、私は嫌いなのです。
・いばら美喜「大発明」
「発明家の父親と、娘と息子の三人。
父親が長年精魂傾けた発明とは、「真犯人発見器」。
それは「三千七百匹の生殺しにした蛇の片目をえぐりとってこの機械の中に収めた」もので、「その蛇の恨みが執念となって犯人を探し出す」のだった。
しかし、金欠により、発明は行き詰る。
そこへ息子が勤め先の社長から金を借りると言い、娘と一緒に出かける。
金を手に入れ、発明は完成するが…」
知名度は皆無ですが、傑作です。
機械を操作すると「真犯人の片目がとび出す」なんて常人の発想ではありません。
同じ作者の「大天才」ほど派手ではありませんが、どことなくクセになりそうなマンガです…。
・サツキ貫太「腕時計」
「貧しい母子家庭の青年。
学校ではこの町のボスの息子にいじめられる毎日。そんな彼が願うものは、腕時計だった。
彼の母親は掃除婦として働いているが、偶然に腕時計を拾う。
が、その腕時計は、町のボスが邪魔者を殺すために、そのボスのもとに送った時限爆弾式のものだった…」
星新一先生のエッセイで「爆弾を仕掛けた万年筆が巡り巡って、それを渡した男のもとに戻ってくる」という短編のことを読みましたが(どの本か忘れてしまいました…)、多分、その設定を借りたものと思われます。(いまだに誰の、何と言う作品かわかりません。)
ちょっぴり幽霊を出して、「怪談」にしております。
・浜慎二「太陽が消える」
「世の中がおもしろくない青年。
偶然が重なり、彼は要人の暗殺計画に巻き込まれる。
最初はおもしろがり、暗殺もやる気になっていたのだが…」
ホラーでなく、サスペンスです。
「黒猫」か何かからの再録と思いますが、詳細は不明です。
・注1
小島剛夕先生には「花の白虎隊}(ひばり書房/220円/1965年頃)という作品があります。
その作品のために、会津戦役について調べていた小島先生がそれをネタにして描いたのかもしれません。
・備考
状態悪し。I文庫仕様(カバー裏に新聞紙等による補修。表紙を本体から取り外し、本体を何らかの厚紙で覆っている)。糸綴じあり。カバー痛み(特に、背表紙がボロボロ)。p120より最終稿まで下部に水濡れの跡あり。
2014年11月2・3日 ページ作成・執筆