「怪談・75」(1965年頃/220円)



 収録作品

・浜慎二「さよならノイローゼ」 「特派員として、アメリカ合衆国へ派遣されることになった新聞記者の青年。
 彼は毎夜、悪夢に悩まされていた。
 その夢の中で、毎回、同じ美人によって、彼は殺されてしまう。
 更に、夢の中の彼は、旅行用の格好をしていた。
 そして、出発当日を迎えるのだが…」
 使い古されたテーマですが、浜慎二先生によりスマートにまとめられております。
 この作品は菅本順一先生の「血と蝶」収録の「夢・夢・夢」に影響を与えたと私は推測してます。

・小島剛夕「浅き夢見じ」
「大阪の木綿問屋、浪華屋の娘、冬は、女らしさというものがなく、能面女と呼ばれていた。
 ある夕方、彼女の家を、江戸随一の浮世絵画家、香川国麿が訪れる。
 風俗の勉強に来ていた国麿に、娘の絵を描いてもらうために、冬の父親が招いたのであった。
 国麿は冬の絵を描くことに強く望み、冬も自分の中に温かみというものを見出してもらおうと協力を惜しまない。
 だが、国麿は彼女の中に「生きている心」を感じ取れず、いくら絵を描いてもそれは「人形」でしかない。
 国麿と同様思い悩む冬に、国麿は、恋を、それも、悲しい恋の経験をしたことがあるかと問う。
 彼は、ある若衆と対になる絵を描こうとしており、そのモデルが冬であった。
 そして、その絵が並んで掛けられた時、絵の人物同士の心が通じ合っていることがわかるような絵を目指していた。
 冬は若衆の絵を見ることを望むが、国麿は彼女の将来を考え、肯んじない(がえ・んじない)。
 だが、その夜、冬は若衆の絵を隠れ見る。
 彼女はたちどころに若衆に心を奪われるが、現身(うつしみ)では叶わぬ恋であることを知る。
 国麿は若衆の面影に胸に抱く冬を描き、絵を完成させるのだが…」
 傑作です。復刻の価値、十二分にあります。
 小島剛夕先生の「怪談」がちゃんと紹介されたら、日本だけでなく、海外でも、狂喜する人、多いんじゃないでしょうか?

・松下哲也「魂を食う少女」
「ある村の社に、村の守護神として雨神の女神像が祀られていた。
 この神は、一方で、村で死者が出る時に、死神をその家に遣わすと恐れられていた。
 ある夜、神主のもとに、社の主を名乗る少女が現れ、部落の木戸正雄の一人娘、江梨子が死出の旅に出ると告げる。
 神主は木戸家に向かうが、木戸家では村の掟に背いて、死神を家に入れないように、戸や窓を塞いでいた。
 両親は死神から娘を守ろうとするのであるが…」
 発想は面白いと思うのですが、ぶっちゃけ、消化不良な内容です。
 娘の命を救おうとする両親と死神との攻防…みたいな感じで、内容を膨らましたら、面白かったかもしれません。

・サツキ貫太「黒い峡谷」
「昭和十八年(1943年)、北支河南戦線。
 敵の後方攪乱の任務を受けた日本軍の特務潜行隊はペスト発生の知らせを受ける。
 本部に戻ろうとする途中、一行はある部落を発見する。
 嫌われ者の准尉は、中国の民衆に恩恵を施して、職を解かれた元・軍医の岩崎を、村の偵察に行かせる。
 馬なしで行かせたのは、もしも部落でペストが発生していれば、岩崎は村から出させないようにするためであった。
 彼に懐いていた中国人の少年は、彼の身を心配して、単身で後を追う。
 岩崎が部落を訪れると、日本人の少佐が一人いるだけであった。
 少佐によると、ペストによって、彼以外は部落民も兵隊も死に絶えたと言う。
 岩崎は発火信号でペスト発生を部隊に知らせる。
 また、少佐から南には地雷原があると教えられ、それも部隊に伝える。
 部隊は岩崎と中国人の少年を見捨てて、安全な西に向かうのだが、それは少佐の罠であった…」
 実は、木彫りの神様の人形が伏線になっているのですが、オチとのつながりがわかりにくく、イマイチです。
 登場人物が、雑軍の服装をして敵中を荒らす特務潜行隊というのが、マニアックかも。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。浜作品、p10にコマ内に剥げあり、また、p11に赤い紙が一部、貼り付いている。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。

2017年10月24日 ページ作成・執筆

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