「怪談・78」(220円)
収録作品
・古賀しんさく「健啖家」
「少年時代、家庭が貧乏で飢えに苦しんだことがトラウマになっている青年。
彼の夢はおいしいものを腹いっぱい食べることであったが、大人になっても貧乏なまま。
ある日、彼はセールスマンから人形を買う。
その人形はネジさえ巻けば、生きた人間のように動くのであった。
青年は人形とすっかり意気投合して、人形を本物の人間のように扱う。
人形と一心同体になろうとする青年の思惑とは…?」
菊地秀行氏・編「貸本怪談まんが傑作選 妖の巻」(立風書房/1991年7月10日発行)に復刻されております。
古賀新一先生のマンガには、腹をすかせた痩せ型の主人公が時折見受けられますが、貧しい少年時代を送った先生がモデルなのでありましょうか?
・小島剛夕「まぼろしの群盗」
「ある部落に半死半生で辿り着いた青年。
彼は、うわごとのように「鬼が出た」と繰り返す。
村人達は彼に食事を与え、話を聞くと、青年は小弥太と言い、茜という女性と駆け落ちして、都を目指していたと言う。
しかし、途中、小弥太はマムシに噛まれ、荒れたお堂にて身体を休める。
茜の心からの看病が功を奏し、小弥太は一命を取り留めるが、その夜、鬼が現れる。
小弥太は抵抗しようとするが、病み上がりの身の上、力及ばず、茜は鬼にさらわれてしまうのだった。
そのことを悔やみ、小弥太は幾日も嘆き暮らすが、そんな小弥太を庄屋の娘が見初める。
二人は愛を育み、祝言をあげることになるが、その頃、「風の様に押し入って、風の様に音もなく去ってゆく」風盗の噂が村で囁かれるようになる…」
「今昔物語」から採った話だそうです。
小島剛夕先生とつながりの深い白土三平先生も「鬼」(1963年)にて同内容で描いておりますが、個人的には、小島剛夕先生のバージョンの方が好きです。
「ブラック怪談」(ひばり書房黒枠)にて再録。
・サツキ貫太「地下室」
「マンション建設予定地に建つ廃ビルには幽霊が出ると噂されていた。
管理者の両親が急用で不在の一月の間、その子供の兄弟が住み込むことになる。
兄は学校に出かけ、幼い弟が一人退屈していると、怪しい人影を目にする。
勇気を振り絞り、弟がビルを探索すると、地下室から泣き声が聞こえる。
そこには女の子がしゃがみ込んでおり、彼に近づかないよう頼む。
その女の子は東京大空襲で死んでおり、顔半分に火傷が残っていた。
弟は彼女と友達になるが、兄達に幽霊と一緒にいたことを知られてしまう…」
浜慎二先生の「ある夏の日に」(「怪談増刊号」収録)の影響があるかもしれません。
ちなみに、いろいろな幽霊譚は存在しておりますが、幽霊に整形手術を施す話は、私、コレしか知りません。
他にもご存知の方がおられましたら、御教示いただけると幸いです。
・浜慎二「刑事・沼京介駆け出しシリーズ第一回 俺達の城」
「苦学が実り、晴れて刑事となった沼京介。
彼の初めて担当する事件は、代議士の秋沢勇宅に暴漢が押し入った事件であった。
彼は辛抱強く聞き込みをして回る。
そこで浮かび上がってきたのは、彼の弟分だった、孤児の少年だった。
彼が、少年が「城」と呼んでいた廃ビルを捜索すると、犯行に使われた銃が見つかる。
少年の将来を思い、京介は銃から弾丸を抜き取り、このことは胸にしまい、廃ビルから立ち去るのだが…」
「黒猫」に発表された作品ではないでしょうか。
出来はいいのですが、怪奇マンガではなく、刑事ものです。
・備考
ビニールカバー貼り付け。カバー痛み。糸綴じあり。全体的に水濡れの痕あり(最初の方がひどい)。全体的にシミ多し。コマにかからぬ欠損、幾つか。pp76〜88(サツキ貫太作品)、シミひどし。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2017年10月20日 ページ作成・執筆