「怪談・79」(220円)



 収録作品

・古賀しんさく「招き猫」
「すっかり時代遅れになって、客の失笑を買っているお化け屋敷。
 業績はがた落ちで、オーナーの息子は今風のスケート場にでもすればいいと提案するが、昔気質のオーナーは断じて首を振らない。
 そんなある日、祖母がお百度参りをして、お告げを受けたと話す。
 そのお告げとは、入り口に招き猫を飾れば、商売が繁盛するというものであった。
 オーナーはその話に乗り気になり、人形の猫では生ぬるいと、本物の猫で招き猫を作ろうとする。
 彼は家にたくさんの猫を集め、その中で最も執念深い猫を火あぶりにして殺すと、それを剥製にする。
 彼は意気揚々とこの剥製の招き猫を店先に飾るのだが…」

・小島剛夕「四谷怪談」
「仕官を夢見る、浪人暮らしの民谷伊右ェ門と、病弱な妻のお岩。
 貧しいながらも、二人は互いをいたわり合って、暮らしていた。
 伊右ェ門は、お岩の薬を手に入れるため、薬屋の阿波屋の娘に古典を教える。
 阿波屋の主人は、娘が伊右ェ門に惚れていることを利用して、伊右ェ門を養子に迎えようと画策。
 と言うのも、民谷という名前と家柄を手に入れることによって、公代御用達商となり、いろいろと幅を利かせることができるからであった。
 伊右ェ門はお岩との離婚は承知しなかったが、阿波屋の主人に仕官の口をちらつかせられると、心は揺れる。
 阿波屋の主人は、仕官を口実にして、お岩のもとにはたまに帰ることにしたら大丈夫と説得し、伊右ェ門は阿波屋への養子入りを承知してしまう。
 暗い気持ちで家に帰る伊右ェ門だが、阿波屋の主人の差し金で、お岩の薬は劇薬に変えられていた。
 伊右ェ門の態度からお岩は事情を悟るが、伊右ェ門の幸せのために独りで堪え忍ぶ。
 伊右衛門の留守の間に、お岩の病状は悪化する一方…そして、伊右ェ門と阿波屋の娘の祝言の日を迎える…」
 小島剛夕バージョン「四谷怪談」ですが、素晴らしい!!
 あの陰惨な「四谷怪談」を「純愛もの」にアレンジして、破綻なくきっちりまとめているのが凄過ぎます!!
「四谷怪談」のマンガ化は多数ありますが、これだけ「ナイス・ガイ」な伊右ェ門は恐らく、この作品だけです。
 ラストをどう感じるかで評価が分かれるかもしれませんが、ここは一つ、アレンジの妙を味わうべきでしょう。真剣に、復刻が望まれます。
 それにしても、やはり、小島剛夕先生もお岩神社にお参りしたんでしょうかね?
 「オール怪談」(ひばり書房黒枠)にて再録されております。

・西たけろう「赤壁屋敷」
「真っ赤な壁で囲まれた大きな屋敷。
 そこには「将軍」というあだ名の老人が住んでいた。
 彼は過去には偉大な軍人だったのであろうが、年老いた今は幻覚を見ては暴れる奇人となっていた。
 彼は、太平洋戦争の際、砂漠でさまよっていた時(注1)、水を一人占めにするために部下を射殺していた。
 部下の幻覚は、水面やガラス、鏡の中に突然に現れ、将軍は部下の幻覚が自分の過去を暴くという妄想に脅かされる。
 部下の幻覚を殺すために、彼は学生達から「液体水素」を奪うのだが…」
 ネタばれですが、部下の幻覚を「液体水素」で氷漬けにしようとする発想がナイス!!
 でも、一般の学校に液体水素を作る装置なんか普通置いておくかな〜?
 あと、ラストの「あの屋敷の塀は何故あんなに赤くぬってあったのだろうか」って言われても、困ります…。

・注1
 太平洋戦争時の南方戦線と言えば、ジャングルのイメージがありますが、砂漠もあったのでしょうか?
 どうも勘違いのような気が…。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。カバー痛み。糸綴じあり。全体的にシミ多し(古賀作品ひどし)。pp120・121(西作品)、ページ同士がくっついて剥がれた痕あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2017年11月13日 ページ作成・執筆

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