「怪談・83」(1965年頃/220円)



 収録作品

・浜慎二「花の死」
「広島で原爆を受け、放射能に身体を蝕まれていた青年は、故郷に戻って実家が営んでいた花屋を開こうと、質屋で強盗殺人を犯してしまう。
 その後、青年の前に見知らぬ少女が度々姿を現す。
 警察の包囲網に徐々に追い詰められていく中で、青年は少女のことを思い出す。
 それは広島に原爆が投下された日、母親とはぐれた少年時代の青年は、独りで泣いていた少女に、白百合の花を「心をきれいにするんだって」とあげたことがあった。
 少女に出合ったことで青年は更生することを決意するが…」

・小島剛夕「いま帰り来ぬ」
「嵐に遭った漁船。
 右往左往する乗組員の中、舵取りの老人、新吉は独り考え込んでいた。
 新吉は三十年前に名前以外の記憶を失って、浜辺に打ち上げられていたのだが、こういう嵐の日になると、記憶を取り戻せそうになるのだった。
 舟はあえなく難破。
 九死に一生を得て、浜辺に打ち上げられるが、新吉は記憶を取り戻していた。
 新吉は、元・隅田川の船頭。ふとしたきっかけで、呉服屋の娘のお小夜と知り合い、互いに心を固く通じ合わせる。
 が、お小夜に縁談が持ち上がり、その相手はお小夜が忌み嫌うドラ息子。彼女の幸福のために、新吉はドラ息子を殺害。
 役人に捕まった彼に、お小夜は彼に白無垢姿を捧げて、何年でも待つと言う。
 遠島になった彼は、仲間と島抜けをするが、舟が遭難、彼だけが助かったのだ。
 新吉はお小夜のもとに向かう…」

・池川伸治「ショック八話」
「3、4ページ程の短編(?)が八話」
 解説のしようがありませんので、あしからず。
 とりあえず、印象深いのは、「レストラン『GETEMONO』で、人間そっくりの料理をばりばり食べる少女を描いた第八話」でしょうが、最後に「奇を好み食べる人々」への批判を一言付け加えるのを忘れない池川先生。
 いいじゃん。他に迷惑をかけるでなけりゃ、(人肉以外なら)何を食べようと、大きなお世話。蛆虫の揚げ物を食おうが、犬の丸焼きを食おうが、雀の頭をかじろうが、鯨を食おうが、シーラカンスを握り寿司にして食おうが、スカトロ・プレイで○○○を食おうが、こちらの勝手……と、大人気なくも、ちょっとキレ気味に思ったりもします。

・山下よしお「猫少女の墓」
「台風の中、道に迷った青年は、奇妙な痩せ猫を見る。
 その痩せ猫の後をつけていくと、青年は見知らぬ団地に出る。
 その団地のある部屋に、以前に亡くなった青年の恋人が女中と共に住んでいた…」
 粗筋を簡単な説明で済ましておりますが、文章で説明するのが、かなり困難な内容です。
 こう断言するのは心苦しいのですが、恐ろしく下手な絵に加え、分裂的(悪く言えば、テキト〜)と形容してもいいストーリーです。
 ただ、一つ、見所がありまして、個人的な推測ですが、松下哲也先生のマンガからかなり「いただいちゃって」ます。
 どうも松下哲也先生の作品(三田京子先生がアシスタント)を彷彿される描写がちらほら。
 いつか時間があれば、検証してみたいと思っております。

・備考
 状態悪し。ビニールカバー貼り付け。ビニールカバー破れによるカバー痛み。糸綴じあり。前後の遊び紙破れ。pp9・10の中央より下に大きな破れあり。pp21・22、pp31・32にコマに若干かかる欠損あり。pp35・36、下部にコマにかかる破れあり。

平成26年11月11・12日 ページ作成・執筆

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