「怪談・87」(220円)


 収録作品

・浜慎二「灰色の少女」
「和子の小学校では、女生徒が襲われ、血を吸われるという事件が立て続けに起こる。
 校内での犯行でありながら、犯人はさっぱりわからない。
 和子は、最近、転校してきた水上という少女と一緒に帰ろうとすると、彼女の家に招待される。
 少女と召使の老婆だけが暮らす、薄暗く不気味な家、そのある部屋には老婆の絵が飾ってあった。
 その絵は、少女のおばあさんの絵ということだったが、血で濡れていた。
 また、和子は少女の写真を見つけるが、それはとても古びた写真だった。
 少女はおばあさんの写真だと言うが、あまりにも少女に似ている…」
 個人的に、傑作だと思います。
 浜慎二先生は「吸血鬼」や「絵」を題材にしたものが得意で、この作品もその手のものの佳作であります。
 タイトルが「灰色な少女」なのは、オスカー・ワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」に引っ掛けているのでしょうか?
 が、この作品の最大のポイントは吸血鬼の少女の可愛さでありましょう。う〜ん、ラブリ〜です!!
 ちなみに、「こわい怪談@」(貸本/ひばり書房)や「ブラック怪談」(ひばり書房黒枠)にて「吸血少女」のタイトルで再録。また、「百年少女」(立風書房)で、かなりのアレンジを施して、リメイクされております。

・小島剛夕「遥かなる歳月」
「山里の湯の里で、独り暮らしている老人。
 彼は若い頃、その腕を買われ、江戸でも有数の料亭で板前として働いていた。
 そこで、彼と、料亭の娘との間にほのかな愛が生まれる。
 だが、互いに言い出せないまま、娘に縁談の話が舞い込み、彼は身分違いの恋とあきらめる。
 そして、三社祭の際、彼は、手古舞連の行進をしている彼女の名前を一声呼び、その足で田舎に帰ったのであった。
 それから数十年経った秋の晩、彼の目の前に、手古舞姿の娘の姿が再び現れる…」
 「オール怪談・34」(貸本/ひばり書房)からの再録です。(巻頭の紹介イラスト・ページはそちらを参考のこと)
 小島剛夕先生、十八番の悲恋ものです。
 同じ「結ばれぬ恋」にしても、今回は「手古舞」(てこまい)の描写がアクセントになっております。
 日本の文化に対して恐ろしく(いや、恥知らずは程!!)無知な私には、「手古舞」の描写は非常に興味深いものがありました。機会があれば、観てみたいものであります。

・池川伸治「鬼面の風」
「欲望・怒り・嫉妬にまみれた心に殺意が芽生える時、人の心の間を「鬼面の風」が吹く。
 その時、人は姿も心と「鬼」となる…という悲劇を描いた短編」
 ストレートな内容です。皆さん、ちと理性をなくし過ぎですが…。

・備考
 ビニールカバー貼り付け、それによる本体の歪み。21ページに落書きあり。

平成26年6月15日 執筆・ページ作成

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