滝沢解・作/片桐七郎・画「魔性の淫」(1986年7月10日初版発行)
・「淫之一 狐火」
「群馬県北部白根山中で中年男女の変死体が発見される。
その十九日後には夜の山道を車で迷った男性二人もまた変死する。
この二つの事件は迷宮入りするが、どちらの事件にも一人の娘が関係していた…」
・「淫之二 岩魚姫」
「保倉忠夫は三星薬品の営業課に勤める男性(バツイチ)。
彼は釣りに出ていた時に、いつの間にか娘を抱いていたことがあった。
彼は彼女を魚だと信じ、釣り宿で釣り仲間たちに話すも、誰も本気にしてくれない。
仲間達は夜釣りにこっそり出かけ、忠夫は一人、宿に残る。
すると、彼の部屋にあの時の娘が現れる。
岩魚姫と名乗る娘を彼は抱くのだが…」
・「淫之三 岩魚が出てきた日…」
「四菱化学営業部の浜野はソープランドで不思議な娘と出会う。
彼女はサチコと名乗り、部屋の中にあるプールで水中セックスをする。
驚くべきことに、サチコは三十分近くも水中にいて、平気であった。
彼女は自分は岩魚で、岩手県竜泉洞の地底湖から地下水脈を泳いで東京にまで来たと話す。
浜野はサチコに興味を持ち、四菱化学が支援している帝国水産大学教授の辻のもとへ彼女を連れて行く。
辻は岩魚の研究とバイオテクノロジーの分野で名声を得ていた。
サチコが浜野や辻に会いに来た目的とは…?」
・「淫之四 哀しみの魔性」
「保倉忠夫はもう一度岩魚姫に会おうとするも、何の手がかりも得られない。
ある夜、湖の近くでキャンプしていると、女性が助けを求めに来る。
彼女の車がエンコしたというので、車を見ていると、突如、彼女が老化する。
気が付くと、彼は北軽井沢にある精神病院に監禁されていた。
あの夜の女性は高平和子という女医で、彼を偏執狂と診断し、強制的に入院させる。
高平和子の正体とは…?」
・「淫之五 快感願望」
「太平洋製薬本社ビルで起こった男女の猟奇殺人。
殺害現場の応接室には時価数千万円の甲冑が飾られており、忠夫はこの事件の裏に岩魚姫の存在を嗅ぎつける。
忠夫は早速、会社に甲冑を売った骨董屋に行くも、門前払い。
すると、それを見ていた老婆が手招きし、彼女の民宿に泊まるのなら、甲冑について教えると言う。
老婆は彼を岩魚神社に案内し、滝の裏にある洞窟に入る。
そこで甲冑の由来を話すのだが…」
・「淫之六 人魚の里」
「忠夫は岩魚姫を捜すのに熱中したため、製薬会社を辞め、印刷会社に勤めるようになる。
ある夜、飲み屋から出たところを禿のヤクザに殴られ、性器を切り落とされそうになる。
忠夫はヤクザの言葉から彼が岩魚姫のことを知っているのではないかと思い、ヤクザに聞こうとするが、ヤクザは抗争に巻き込まれて射殺。
ヤクザの持ち物に「ソープランド マーメイド」のマッチがあり、彼がそこを訪ねると…」
・「淫之七 少女仮面(前篇)」
「岩魚姫は次々とカップルを襲い、男性器を切り取る。
その理由とは…?
そして、彼女の願いとは…?」
・「淫之八 少女仮面(後篇)」
「飲み屋で忠夫は心理学者の苅部と昼間の事件について話す。
昼間の事件とは、海水浴客でごった返している浜辺のど真ん中に男の死体が降ってきたことで、忠夫は現場に居合わせていた。
彼はそこで岩魚姫を見かけるも、彼女は姿を消してしまう。
岩魚姫は幻想なのであろうか…?」
滝沢解の原作作品の多くに共通することですが、ぶっちゃけ、意味わからねっす。
一応、「岩魚姫という謎の女を主人公が追う」話で、一種の「人魚もの」と言えないこともないです。
ただ、この作品、話がしょっちゅう脱線して、しかも、脱線した話が投げっぱなしで終わることがしばしば。
更に、所々に入る説明がさっぱり意味不明で、読んでいるうちに混乱することは必至です。
と書くと、つまらなそうですが、全体を通して強烈な残酷描写とハードなエロ描写に彩られておりますので、見た目のインパクトだけはあります。
異色作と評価するか、失敗作と評価するか、意見がわかれそうですが、個人的には失敗作だと思います。
ちなみに、「淫之三」での魚の仮面を付けての乱交シーンや「淫之六」でのソープ嬢にウルトラマンのお面を付けて会うシーンはかなりマヌケです。ギャグを狙ったんでしょうか…?
2024年8月16日 ページ作成・執筆