宮口太郎「吸血鬼 古塔の妖怪」(55円/1948年10月20日発行)
・「十三年目」
「今より数百年前、ナクリスの都、メルツ湖畔に王城があり、その向かい側には古塔があった。
古塔には「ドラキューラ」という名の魔法使いの老婆が住んでおり、迷信深い信徒を集め、その生血を吸っていた。
国王ダーネスはこれに怒り、ドラキューラを絞首刑に処し、遺体を古塔の地下に埋める。
以来、古塔は誰も近寄らないまま寂れていったが、どこからか処刑から十三年目にドラキューラが吸血鬼となって古塔より現れるという噂が流れるようになる…」
・「奇怪な予言者」
「ドラキューラが処刑されて十三年目の日より毎夜、町に奇怪な老人が現れる。
老人は片目で、異臭を発しており、「ドラキューラ様が生き返るぞ」と告げ歩く。
また、その異臭に接した者は皆、疫病に倒れていくのだった…」
・「姫の危機」
「ある夜、奇怪な老人はナクリス城へと侵入する。
彼はセリア姫の寝室を襲うが、武勇の達人、ラレスが駆けつけ、老人を追い払う。
だが、セリア姫には疫病の兆候が出ていた。
ラレスはダーネス王にこれはドラキューラの呪いで、ドラキューラの死体を焼き払うことを進言する…」
・「呪いの木乃伊」
「翌朝、ラレスと十名の部下はドラキューラの古塔を目指し出発する。
古塔の裏には信徒たちの墓があり、ラレスたちはそれを片端から暴く。
すると、部下の一人が木乃伊を見つけ悲鳴を上げるが、その木乃伊とは…?」
・「吸血鬼ドラキューラ」
「嵐の中、ラレスの前にドラキューラが姿を現す。
姫からもらった不思議な剣の威力でドラキューラは逃げ出し、ラレスはその後を追う。
しかし、足を滑らせ、川の濁流に落ちてしまい…」
・「ラレスの活躍」
「ラレスは古塔に到着するも、入り口は固く閉ざされていた。
そこで、彼は蔓を何本か切り集め、古塔の裏の守にある巨木へと登る。
蔓のロープを利用して、どうにか塔内に入ったものの、次は巨大コウモリが襲いかかってくる。
コウモリを撃退した後、彼は偶然に地下への入り口を発見する。
彼が地下で目にしたものとは…?」
・「妖怪の最後」
「セレスはドラキューラを追い、ある部屋へとやって来る。
そこには怪しい棺があり、その中には…?」
・「救援」
「ドラキューラを退治したものの、塔から脱出する時にラレスは大鷲に両腕を掴まれ、空中高く持ち上げられる。
ラレスの運命は…?」
荒木書房(大阪市南区内安堂寺町)から出版された「荒木冒険少年少女文庫」の一冊です。(と言っても、これしか知らない…。)
漫画というよりは「絵物語」で、ジャンルは「怪奇冒険もの」。
この作品には「吸血鬼」の「ドラキューラ」が出てきて、それだけで興奮してしまいますが、その正体が「魔法使いの老婆」で速攻のけぞります。
しかも、絵を見ればわかりますが、「魔法使い」と言うよりは「安達が原の鬼婆」と形容した方が相応しい容貌で、ますますエビぞりになってしまいます。
でも、ヘンテコなのはそこぐらいで、内容的にはきっちりと作られた怪奇冒険譚でして、作者のポテンシャルの高さを感じさせます。
実際、作者の宮口太郎先生は怪奇ものに関してかなりの知識があったものと推測させられます。
更に、怨念や祟りといった日本的な鬱陶しさがなく、西洋風なドライな感性も評価できるのではないでしょうか?
この作品が海外のホラー映画等の換骨奪胎だったとしても、戦後の1948年にこういう感性があったということは私にとっては非常な驚きでありました。
戦前戦中戦後の子供向けのホラー作品、まだまだ思いもかけぬ発見が潜んでいるかもしれません。
余談ですが、中表紙の棺から人が顔を覗かせている絵。
どこかで見たような記憶があるのですが、心当たりのある方、いらっしゃいませんでしょうか?
アントワーヌ・ヴィールツ「早すぎた埋葬」?サイレント映画の「アッシャー家の末裔」にも似たようなシーンがあるようなのだけど未見…。
・備考
経年(75年以上)を考えれば、まあまあの状態。背表紙、痛み激しい。p60、p64、個人のものらしきハンコ押印。
2025年9月23日 ページ作成・執筆(サイト開設から10年。何か実感が持てないな。)