亜砂都優子・画/池田悦子・原作「妖華 ―アルラウネ―A」(1987年5月15日初版発行)

 断頭台の下で何百人もの死刑囚の血を吸って咲く花、アルラウネ。
 アルラウネが現われて五百年後、日本人の遠野華(とおの・はな)はその毒を受け継ぎ、アルラウネが復活する。
 彼女の行く所には悪徳の種が蒔かれ、悪の華が乱れ咲く…。

・「第5話 エデンの犠牲(いけにえ)」
「世界の国を歴訪中の教皇、ヨハネス三世が日本を訪れる。
 教皇の従者は幸彦という混血の日本人であった。
 孤児の彼は教会の施設に預けられていたが、十五年前、イタリアの神学校に引き取られると、神学校随一の秀才と言われるようになり、今は教皇の秘蔵っ子であった。
 彼が教皇と共に手紙のチェックをしていると、大庭神父が特別ミサの件でやって来る。
 大庭神父は特別ミサのオルガン奏者として遠野華を連れてくるが、幸彦は彼女の「邪悪な影」を見抜く。
 すると、サチは彼を「偽善者」と呼んで「血のにおいを感じる」と指摘し、「なんじら人を審くな 審かれざらんためなり」と聖書の言葉を言い残して、彼の前から去る。
 その時、大庭神父のもとにある女性が死にかけて、懺悔を求めていると知らせが入る。
 大庭神父の教会は幸彦が子供時代を過ごした聖ペトロ教会で、「聖セバスチャンの殉教」の壁画があった。
 死にかけている女は石沢夏江という名で、彼女の名前を聞くと、幸彦は自分が懺悔を聞こうと申し出る。
 石沢夏江は「聖セバスチャンの殉教」の壁画の前で懺悔をするが、その内容とは…?」

・「第6話 仮面の恋」
「前回の件で幸彦は聖職者の道を断念する。
 ある日、彼は古物商のムハムド・シンという男から呼び出される。
 用件は、中世期のものらしい古書を、ラテン語に堪能な幸彦に翻訳してほしいというものであった。
 話の最中、シンの妻がお茶を出しに来るが、幸彦は彼女の美しさに胸を打たれる。
 彼女の名はミルザで、シンに借金のかたで妻にされ、幽閉生活を送っていた。
 彼女は機会を見て、助けを求める手紙を古書に滑り込ませる。
 次の日の晩の仮装パーティで、幸彦はミルザと再会する。
 二人がシンから逃げる話をしていると、その場に女マジシャンのタランチュラが現れる。
 タランチュラは人間すり替えのマジックを利用して、駆け落ちしたらどうかと提案するのだが…」

・「第7話 その次のページ」
「藤尾良彰は画家志望の青年。
 アパートの隣に住む三枝紀美はよくモデルを務めていたが、ある日、彼女のミスで彼は右手に火傷を負う。
 画家の道をあきらめ、彼は故郷に戻るが、彼女は責任を取るため、彼の妻になると約束し、婚姻届けを持って、電車で彼の故郷に向かう。
 途中、彼女の前の席に美しい女性が座る。
 彼女の読んでいる写真週刊誌は紀美と同じものなのに、表紙が違っていた。
 女性が席を立っている時、その雑誌を見てみると、雑誌が発行されたのは一年後。
 しかも、中には紀美が億万長者の青年実業家と結婚したという記事があった。
 これを目にした後、彼女は途中下車し、婚姻届けを破り捨て、写真に載っていた青年を探し出す。
 後は写真週刊誌の記事通りにとんとん拍子に行くのだが…」

・「第8話 夢幻劇場」
「滝沢美和と仁科ヒロ子は若手のダンサーで、親友同士。
 美和は演出家の北見勝彦の恋人で、今回のオーディションでも主役をゲットするつもりでいた。
 一方のヒロ子はそそっかしい性格で、美和が頼んで、ちょい役をちまちまやっていた。
 オーディションの準備中、音楽のアレンジを担当している遠野華が応募者控室に間違って入ってくる。
 美和は彼女の美しさにギョッとするが、彼女は華をライバルと勘違いしたのであった。
 すると、華は彼女のライバルはヒロ子と言う。
 美和はそれを笑い飛ばし、華からアルラウネの花をもらい、それを髪に飾り、オーディションに挑む。
 彼女の演技は上々で、これで決まりかと思われたが、次のヒロ子の演技は…」

・「TRUTH」
「ニューヨーク、ラ・ガーディア空港。
 スティーシーは大人気ブルーアイドソウル系グループ、ブラックナイトのボーカルで、早く故郷のロサンジェルスに帰りたいと思うものの、飛行機は吹雪で全て欠航していた。
 そんな時、彼はジェインという十六歳の少女と出会う。
 彼女はポールという青年と駆け落ちしようとしていたが、彼は時期尚早と彼女を説得しようとする。
 優柔不断な彼に苛立った彼女はスティーシーと共にロサンジェルスに行くと宣言。
 とりあえず、二人は喫茶店でコーヒーを飲みながら、あれこれ話す。
 スティーシーはジェインと同様に自分も「失恋」したと話し始めるのだが…」

・「とつぜんですが…」
「3ページもらったので、亜砂都先生が自分の好きなロック・ミュージシャンについて語るエッセイ(?)。
 小学校の時から洋楽を聴いてきただけあって、なかなか好みが渋い!!(でも、やっぱりイケメン好き)
 「キンクスのレイ・デイビスにもホレたし、ZZトップも大好き」というので、只者じゃないな…」

 「妖華」において最重要キャラ、幸彦の登場です。
 イケメンで頭脳明晰で元・神父という、美味しすぎるキャラで、アルラウネと敵対関係にありますが、後の巻では一緒に酒(?)を飲んだりしております。
 まあ、人は良くも悪くも変わるものです。

2024年9月11・12日 ページ作成・執筆

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