高階良子「死の媚薬 闇の呪文」(1991年9月30日初版発行)

 収録作品

・「死の媚薬 闇の呪文」
「本城かおりの恋人は、才能はないがプライドだけは異様に高い画家の久保田和伸。
 かおりの父は画壇では重要人物で、和伸が出世のためだけに彼女に近づいていたことを知り、彼と別れる。
 だが、和伸は、ハイチの魔人、バロン・サムディに頼んで、彼女の蝋人形を作り、彼女を脅迫する。
 全身がひどい苦痛に襲われる中、かおりは、以前、彼女の不幸を予言した青年のことを思い出す。
 その時に彼が彼女に手渡した、琥珀色の石を取り出すと、彼女の前に再び、その青年が現れる。
 その琥珀色の石は、彼の魂の一部で、彼女の心の声を聞くためのものであった。
 彼は彼女を助ける代わりに、彼に、彼女の心の一部を預けるよう言い、彼女にキスをする。
 以来、彼女の身体の痛みは薄れるが、心の一部が空っぽで、何だか悲しい。
 ある日、かおりは、親友の関根萌に案内されて、青年の居場所を訪れる。
 彼の正体とは…?
 そして、かおりの運命は…?」

・「赤い影」
「高校生の中尾亜美は、陸上部の葛城摩利に憧れ、部のマネージャーになる。
 葛城摩利は次々と新記録を打ち立て、オリンピックでの活躍も期待されるような選手であった。
 しかし、ある事故で病院に行ったきり、彼女は学校へは戻らず、皆の前から姿を消す。
 退学届けはひっそり出され、アパートもいつの間にか引き払われており、肉親は皆、海外出張で、彼女のその後の足取りは全く掴めなかった。
 卒業間近、部を辞めた亜美は、父子家庭ということもあり、葛城摩利の不在がひとしお寂しく感じる。
 ある夜、アパートの近くの公衆電話から、父親が電話してくる。
 彼が、亜美が大切にしていた「赤いポンチョのネコ」のボールペンについて話そうとした矢先に、電話は切れ、翌日、交通事故死体として発見される。
 警察は自殺と判断するが、亜美は、父親が何らかのトラブルに巻き込まれたと考える。
 だが、肝心の「赤いポンチョのネコ」は、葛城摩利にプレゼントして、手元にない。
 亜美は、葛城摩利を捜す決意をして、その遠い親戚の折口竜樹を訪れる。
 彼は、眼鏡をかけた学生で、折口家の養子であったが、摩利のことは聞いたことがないと言う。
 失意の亜美は帰り道、轢き逃げされそうになったところを、竜樹に助けられる。
 捻挫した亜美は、折口家に滞在することとなるが、そこで、何度も摩利の姿を目撃する。
 葛城摩利はどこに…?」

 「死の媚薬 闇の呪文」は、ハイチのブードゥー教が扱われております。
 という事は、やっぱりゾンビが出てきまして、嬉しいですね。(ゾンビと言いましても、広義の「ゾンビ」で、「ロメロ・ゾンビ」ではありません。)
 「赤い影」は(ネタばれになりますが)「スタニスラワ・ワラシェビッチ」にインスパイアされたのではないでしょうか?
 作中に出てくる「女子陸上三冠の女王に輝いたF選手」というのが誰か、調べましたが、わかりませんでした。
 ご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけると、幸いです。

2020年1月30日 ページ作成・執筆

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