高階良子「黄泉の小鳥」(1987年2月5日初版発行)

 収録作品

・「黄泉の小鳥」
「海に浮かぶクルーズ船。
 乗っているのは、大学生が七人。
 千野鈴子〜本編の主人公。普通の女子大生。
 武井和人〜武井財閥の御曹司。クルーズ船の持ち主。鈴子に目を付けている。以下のメンバーは彼のグループ。
 信田謙司〜和人の使用人&ブレーン。武井和人の父親に引き取られ、育てられる。
 堤茂雄〜和人の取り巻きの一人。ぽっちゃり。
 千野良夫〜千野鈴子のいとこ。クルーズ旅行に行きたいために、鈴子を旅行に引っ張り込む。 
 阿部弓子〜タカビ〜なお嬢様。和人に夢中で、鈴子を敵視。
 奥村啓子〜霊感少女。
 ある夜、男達四人は流星が近くに島に落下するのを目撃する。
 翌日、その島に向かうと、大きな穴があるだけで、他には何もない。
 啓子は「目に見えない得体のしれないもの」がいると話すが、その気配は急に消えてしまったらしい。
 鈴子は穴の近くに、傷ついた小鳥を見つけ、それをクルーズ船に持ち帰って、手当てをする。
 その鳥には額に黒い星のマークがあった。
 一行は船に戻るが、何者かによってエンジンオイルを抜き取られ、無線機は壊されてしまう。
 更に、嵐に襲われ、船は座礁、一行は島へと避難する。
 皆、ここでしばらくサバイバル生活を送ることになるが、この島には啓子の言う「得体のしれないもの」がいた。
 「得体のしれないもの」は人や動物にとり憑いては、一人また一人と殺されていく。
 「得体のしれないもの」の正体は…?」

・「風のララバイ」
「高見沢宏は腕っぷしが強く、高校二年の時に、生活指導の教師を半殺しにして、少年院送りとなった。
 少年院を出た後、喫茶店を営む夫婦が身元引受人となり、そこで働くようになる。
 彼の家庭環境は複雑で、父親は女を作って家を出て、母親はそのショックで頭がおかしくなり、交通事故死。
 唯一の身寄りである妹は施設にいるが、彼は施設の前まで行っても、中には入らずじまいであった。
 ある日、彼の前に、「風子」と名乗る謎の少女が現れる。
 彼女は、彼が「泣きながら呼ぶ声がきこえた」ので、「子守唄を歌いに」来たのだと言う。
 風子の慰めによって、荒み切った彼が自分の心に見出したものとは…?」

・「紫陽花色に雨の向こう」
「菅原克美は、日本で指折りの画家の娘であった。
 彼女の家は父親の弟子でたくさんいて、その中の森俊樹という青年と愛し合うようになる。
 だが、彼女が二階の手すりに置いたハサミが、下にいた俊樹の右腕に落ち、彼は画家としての道をあきらめざると得なくなる。
 更に、浅野秀という弟子がハサミをこっそり交換したことで、彼女は浅野に弱みを握られ、俊樹はそれを彼女の心変わりととらえる。
 俊樹にふられ、傷心の克美の前に、風子と名乗る娘が現れる。
 克美は、ジレンマに雁字搦めにされながらも、自分の想いに正直になろうとするのだが…」

 「黄泉の小鳥」は「ゴケミドロ」テーマの佳作です。
 皆、殺されるほどの悪人じゃないんだがなあ〜。
 まあ、孤島に行ったら、登場人物が片端から死んでいくというのは「孤島もの」の宿命ですよね…。
 「風のララバイ」「紫陽花色に雨の向こう」は「風子シリーズ」です。
 「風の菩薩」(「ナーギの塔」収録)の「続編のつもり」とのことです。

2022年9月19・20日 ページ作成・執筆

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