小山田いく「青色学級」(1996年3月10日初版発行)

 収録作品

・「青色学級」(1995年「学園ミステリー」No.33)
「池内美鈴のクラスは、青色学級。
 そこは死んだ子達の学級で、死体が発見されていない者、供養されていない者、思いが残っている者達の魂が集まっていた。
 美鈴は、いじめっ子達に追われ、学校の裏山の岩の割れ目に転落、枯れ木に胴体が貫かれ、亡くなる。
 青色学級では皆、親切にしてくれるが、彼女は時々、徐々に朽ちていく自分の死体を見つめたり、憧れだった仁科を眺めるため、学校に行く。
 彼女が青色学級を卒業できる日は…」

・「カロン」(1995年「サスペリア」10月号) 「カロンは橋詰家の飼い猫。
 最愛の祖母を亡くして以来、ちょっとクサってはいるが、今日も家族を悪い「ゆらり」(霊)から守るべく奮闘していた。
 ある日、町はずれに隕石が落ちる。
 墜落場所には凄まじく凶悪な「ゆらり」が根付き、巨大化したそれは次々と惨事を引き起こしていく。
 カロンが、祖母の「ゆらり」に教えられた、その「ゆらり」への対抗措置とは…?」

・「樹木子(じゅぼっこ)」(1995年「学園ミステリー」No.30)
「有明偲(ありあけ・しのぶ)はドジな少女。
 彼女は、学校の隅にある樹が、テニスコートを作るため、伐られる予定なのが気になって仕方がない。
 小さい頃、いじめられた彼女がその樹の所に行くと、「おともだち」がいて、一緒に遊んでくれたという思い出があった。
 「おともだち」は、人の顔のある木には「樹木子(じゅぼっこ)」がいると彼女に話す。
 「樹木子」の仕業か、その樹の近くで奇怪な体験をする生徒が続出する。
 また、学校には、いつの間にか「樹木子(きぎこ)」という女生徒が存在しており、偲以外は皆、樹木子の存在を当然と思いこまされていた。
 偲は「樹木子(じゅぼっこ)」について力説するが、誰も信じてはくれない。
 また、「樹木子(きぎこ)」も特に何かするわけでなく、偲は怖い目ばかりにあう。
 樹木子の思惑とは…?」

・「〜奇想図書〜 転生人魚」(1994年「学園ミステリー」No.27)
「一ノ沢洵(まこと)は売れないイラストレーター。
 ただ、彼は「人魚」に対しては強いこだわりがあった。
 彼は16歳の時、人魚のようだった、三歳年下の従妹の明海を海で殺害する。
 以来、彼はずっと心の奥で「人魚」を求めていたが、ある時、転生の呪術の存在を知る。
 それは「転生呪秘抄」という古文書で、明海が海の岩場の洞穴で試していた呪法であった。
 彼は、謎の女性図書館員から、その呪法が載っている「人魚図鑑」を借りる。
 それによると、人魚の骨を人間に飲ませると、その人間の中で人魚が育つらしいのだが…」

・「彼の本」(1995年「サスペリア」4月号) 「陰湿で、ブサイクなマキコ。
 彼女は、宿題のため、図書館に本を借りに来るが、横着をして、本のページを破って、持ち去ろうとする。
 その現場を、イケメンな男子生徒に目撃されて、大弱り。
 翌日、彼女は、例のイケメンがいるのを確認してから、破ったページをテープで修繕する。
 思惑通り、彼の目に留まり、彼から彼の「一番好きな本」を貸してもらう。
 その本は、表紙だけでなく中まで「皮」で作られた本であった。
 帰宅後、マキコはその本を読んでみる。
 見知らぬ文字におどろおどろしい絵のその本は、内容は美少年が殺されて、その剥がした皮で本が作られたという内容らしいのだが…」

・「私がいた街」(1995年「学園ミステリー」No.31)
「三月、加納悠里は、父親の転勤に合わせて、引っ越す家を下見に来る。
 家は古ぼけていて、悠里は心底、イヤでたまらない。
 四か月後の七月、実際に引っ越す時には、家は改装され、素敵になっていた。
 しかし、夏休み前に、学校へ行くと、クラスメート達や先生から妙な顔をされる。
 彼女のそっくりで、名前の読み方も一緒な叶有梨という女生徒が四月からいて、昨日から行方がわからないだと言う。
 この叶有梨はとってもひねくれ者で、皆から忌み嫌われていたらしく、当然、悠里も同じ目で見られてしまう。
 また、家では、鏡の中に奇怪な幻を視て、それに襲われるようになる。
 この家にある、大きな鏡に何か秘密があるようなのだが…」

 単行本の前袖にある、故・小山田いく先生のコメントによると、「一度でいいから、ホラー誌に描いてみたいと思っていた(…)」と書かれておりますまして、怪奇マンガに対して興味はかなりのものだったようです。
 実際、小山田先生の怪奇マンガは優れたものが多く、特に、ハートフルな青春ものや猫を扱ったものは非常にいい出来です。
 一方で、「〜奇想図書〜 転生人魚」のような徹底してグロでダークな作品も素晴らしい!!
 亡くなられて数年経ちますが、このまま、忘却の彼方に沈んでしまうことは明らかに損失だと思います。
 こんな駄文でも興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、是非とも作品に、そして、小山田先生の心に触れてみてくださいませ。

2021年2月24・26日 ページ作成・執筆

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