手塚治虫
「ブルンガ1世@」(1980年12月10日初版発行)
「ブルンガ1世A」(1981年2月15日初版発行)

・「悪魔の誕生」(単行本@)
「ある春の宵。
 ジロが一人で勉強していると、トランクを二つ持った、見知らぬ老人が家に上がり込んでくる。
 老人は自分は「悪魔」だと名乗り、トランクから「ブルンガ」を取り出す。
 この「ブルンガ」は巨大な洋梨のような形のもので、地上に神様が生物を創った時に、悪魔が最後につくって神様に見せたものだと言う。
 だが、神様に断られ、悪魔は消すのが惜しく、長い間、持って回っていたのであった。
 老人はジロにブルンガを入れたトランクを渡し、トランクに手を乗せて、どういう生き物にしたいか念じると、翌朝にその通りの生き物になると教える。
 そこへジロの母親が帰ってきて、ジロは押し入れにトランクを隠す。
 しかし、ブルンガは壁を突き破り、外にさまよい出て、片桐太郎という青年に見られてしまう。
 彼は片桐博士の息子であり、幼い頃、悪人にアメリカに連れ去られ、犯罪者へとなるが、16歳の時に自分の出生を知り、日本に帰って来たところであった。
 太郎はジロから話を聞き、片桐博士の家だった廃墟で、二人でブルンガを創造することにする。
 ジロはブルンガに「人間の友だちになれる動物」を望み、太郎は「強さをもった動物」を望む。
 ブルンガは一体、どのような生き物としてこの世に生まれるのであろうか…?」

・「悪魔の正義」(単行本@)
「片桐太郎はブルンガを飼いならし、ブルンガも自分の力を発揮するのを喜ぶ。
 彼の目的は、自分の両親をだまして破滅させ、彼の少年時代をもめちゃくちゃにした奴らへの復讐であった。
 手始めに、彼はブルンガを使って、米軍基地を襲う…」

・「悪魔の奴隷」(単行本@)
「イスラエルのある徒刑囚作業場。
 そこに悪魔の老人が現れ、囚人たち「ブルンゴ」の入ったトランクを渡す。
 この「ブルンゴ」はもう一つのトランクの中身で、ブルンガのつがいであった。
 ガノモスという若い囚人はブルンガが「忠実などれい」で「残忍で冷酷…ねんにでも化けられる怪物」になるよう想像する。
 翌朝、トランクの中に奇怪な形をしたブルンゴが生まれる。
 ガノモスとその仲間はブルンゴを使い、脱獄を目論むのだが…」

・「悪魔の対決」(単行本@)
「ジロは太郎と決別していたが、ある日、太郎が彼に会いに来る。
 実は、中近東あたりでガノモス率いる悪党が怪獣を操って悪事の限りを尽くしていた。
 太郎はガノモスを知っており、彼の冷酷無慈悲なやり方に怒りを覚える。
 彼はブルンガを使って怪獣を倒したいと話すのだが…」

・「悪魔の対決」(単行本@)
「片桐太郎はガノモスの邸に行き、怪獣同士の決闘を申し込む。
 時間と場所は、明日一時、イスラエル空港の滑走路。
 太郎はホテルに帰るが、ガノモスはブルンゴにその後をつけさせる。
 ホテルの部屋で、ブルンゴとブルンガは出会うのだが…」

・「悪魔のいけにえ」(単行本@)
「アラビア砂漠。
 共に逃げ出したブルンガとブルンゴは二匹、ここで暮らす。
 ジロはブルンガが幸せになることを願うも、ガノモスはブルンゴを取り戻そうと捜しまわっていた。
 更に、砂漠にはブルンガたちの食糧がなく、二匹に飢えが迫る。
 それでも、ブルンガはブルンゴに町に行かないよう説得するのだが…」

・「ガノモスの最期」(単行本A)
「ブルンガ達がアラビアにいると知り、片桐太郎とジロはアラビアへと飛ぶ。
 だが、片桐太郎は「イエロー・マイス」という名で国際指名手配されており、早速、警察に捕まってしまう。
 その時、貨物列車が大蛇に襲われ、輸送中の金塊が奪われるという事件が発生。
 片桐たちはその現場に連れて行かれるも、警察の隙を見て逃走する。
 夜明け、片桐は砂漠の中に一軒家を見つけるが、そこはガノモスたちのアジトの一つであった…」

・「ブルンガ二世」(単行本A)
「ブルンゴが妊娠したため、太郎とジロは二匹を東京郊外にある自然動物公園に預ける。
 しかし、他の動物たちはブルンガとブルンゴに敵意をむき出しにして、非常に居心地が悪い。
 遂にブルンガは動物たちを皆殺しにし、二匹は動物公園から逃走。
 更に、ブルンゴは人間の味が忘れられず、山で遊んでいた若者たちを食べてしまったために、ブルンガはブルンゴと訣別する。
 一方、太郎とジロは自然動物公園からの連絡を受け、公園へと急行。
 太郎たちは車でブルンガたちを捜しに行くが、目の前に巨大化したブルンゴの姿が…」

・「影沢商事の怪物」(単行本A)
「片桐太郎は警察に捕まり、留置場に入れられる。
 そこで昔は名の知られた泥棒だった「河骨の有平」という老人と知り合う。
 有平はあらゆる犯罪事件について記憶しており、片桐博士の息子の誘拐事件についても詳しいことを覚えていた。
 しかも、その誘拐事件で手引きをしたのは黒沢という貿易商ということも突き止めていた。
 太郎が復讐する相手を知った時、突然、彼の身元保証人が現れる。
 太郎は有平と一緒に身元保証人の人物に会うが、その人物は顔を隠し、名前を秘密にしていた。
 その人物は太郎にある仕事を依頼するが、その依頼とはある倉庫から箱を三つ持ちだしてくること。  だが、その倉庫はブルンガ二世のねぐらであった。
 太郎と有平は倉庫へと忍び込むが…」

・「悪魔は滅びない」(単行本A)
「人類を滅ぼすために、シベリアのある地方でブルンゴは大量の子供を産む。
 その数は五千匹にものぼり、ブルンゴの子供たちは日本に向けて海を渡る。
 東北地方に上陸したというニュースを聞き、ジロはブルンガがその中にいると思い、ブルンガに会いに行こうとする。
 だが、ブルンガは彼のすぐ近くにいた。
 ブルンガとジロはブルンゴたちのもとへと向かい、そこでブルンガとブルンゴの最後の闘いが始まる…」

 手塚治虫オフィシャル・サイトによると、「冒険王」(秋田書店)に1968年4月〜1969年3月に掲載された作品です。
 単行本の袖に「ブルンガは悪魔のつくった怪獣の物語」で「人間を食いころし、どんなものでも破壊しつくし、自由に姿を変えるブルンガは、ほうっておけばどんどんふえて、たちまち世界をほろぼしてしまうでしょう」と作者の言葉があり、恐らくは、核兵器を暗示しているものと思われます。(現在では他にもいろいろとありますが。)
 育てた人間により善にも悪にもなる怪獣というアイデアは面白いのですが、幾つか釈然としない点がちらほら。
 最大の疑問は、悪魔が人間を滅亡させるのを目的としているのなら、何故、ジロにブルンガの幼生を託したのかということ。(最初から悪人にブルンガを渡せば済む話です。)
 また、ブルンゴはガノモスの「忠実などれい」なのに、どうして命令を聞かないのか?というのも引っかかります。
 ラストもかなり駆け足で、主人公の一人である片桐太郎も消えてしまっている点もモヤモヤ…。
 と、まあ、いろいろと惜しい点はあるものの、ラストのブルンガとブルンゴの対決はもの悲しく、個人的には「悪魔のつくった怪獣」を通して人間を描こうとした意欲作だと思います。

2024年2月2・5・7日 ページ作成・執筆

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