高階良子
「クロノス 漆黒の神話@」(2010年7月30日初版発行)
「クロノス 漆黒の神話A」(2011年1月30日初版発行)
「クロノス 漆黒の神話B」(2011年7月30日初版発行)
「クロノス 漆黒の神話C」(2012年1月30日初版発行)
「クロノス 漆黒の神話D」(2012年7月30日初版発行)
「クロノス 漆黒の神話E」(2013年1月30日初版発行)
「クロノス 漆黒の神話F」(2013年7月30日初版発行)




・「第1話 危険な予知夢」(「ミステリーボニータ」2010年2月号/単行本@)
「野神エリカは平凡な高校生(16歳)。
 裕福な家庭と恋人に恵まれ、幸せな日々を送っていた。
 しかし、ある日、父親にお使いを頼まれたことから彼女の運命は一転する。
 そのお使いとは竹中商事という会社に書類を届けることであったが、彼女はそこで社長の竹中たちに拉致される。
 竹中は彼女を「約束の娘」と呼び、父親の会社を倒産寸前に追い込んで、彼女の身柄を買ったのであった。
 意識を失った彼女は謎の洞窟へと運ばれ、黒装束の男達によって奈落の底へと落とされる。
 その底には「悪意の塊」のような魔物がおり、彼女の身体を八つ裂きにする。
 ふと気づくと、彼女は竹中商事の応接間にいた時間に戻っていた。
 彼女はそこから逃げ出し、墓場で隠れていたところを禍津という男に助けられる。
 禍津はヘバイストス手工芸店を営んでおり、様々な像を作っていた。
 エリカは彼から粘土で像を作るように勧められ、「心に強くあるもの」を形にすると、クロノス神の像ができあがる。
 クロノス神は「天と地の結合によって生まれ出で」「かつては全能で神々の王」であったが、今は「幽冥の底」に囚われているという。
 禍津は、これは彼女の守護神で、彼女が強く信じれば助けてくれると話す。
 竹中商事の追跡は禍津の家にまで及び、エリカは町の人混みの中に紛れ込む。
 ベンチで一休みしている時、彼女のそばに若い娘が座る。
 彼女はひどく怯えており、急に走り出すと、車に轢かれて即死する。
 その際、その娘は間違ってエリカのハンドバックを手にしていた。
 娘はエリカに間違えられ、エリカが警察にそのことを言おうとすると、一人の青年が彼女を引き留める。
 この青年の名は永谷雅治といい、事故死した娘、倉沢美咲(21歳)の知り合いのようであった。
 彼の命を救ったことから、彼はエリカが倉沢美咲として生きられるよう手筈を整えてくれるのだが…」

・「第2話 危険な選択」(「ミステリーボニータ」2010年6月号/単行本@)
「倉沢美咲として生きることとなったエリカ。
 しかし、竹中商事の追跡の手はやまず、いつでも逃げ出せるようにしておかなくてはならないため、まともな職に就けず、窮乏する。
 ある日、彼女はアパートの隣人に部屋へ招かれる。
 隣人は麗華と名乗る美女であった。
 エリカは麗華のゴージャスな部屋で素晴らしい料理をご馳走になっただけでなく、新品の衣類を一通り、プレゼントされる。
 これを着て、エリカが外出すると、恋人の武史のことを思い出す。
 どうしても彼の声が聞きたくなり、携帯電話をかけようとした時、麗華に止められる。
 麗華は携帯電話だと居場所を知られるため、公衆電話を使うよう忠告。
 そして、お守りとして、美しい宝石を散りばめたプラチナの腕輪をエリカの腕にはめる。
 公衆電話で武史に連絡した後、二人はある公園で待ち合わせて、彼の案内で人里離れたロッジに向かう。
 ここで二人は愛し合うのだが…」

・「第3話 危険な香り」(「ミステリーボニータ」2010年9月号/単行本A)
「エリカが倉沢美咲になりかわって半年。
 彼女はレストラン・ダフネでウェイトレスとして働いていた。
 レストランは何故かセレブの客で大繁盛するが、エリカは客の彼女に対する目線を気味悪く感じる。
 ある日、彼女は客の中に竹中の姿を見つける。
 気付かれないようにしていたのに、見知らぬ青年に声をかけられ、水の泡。
 彼は宮崎という名で、倉沢美咲の知り合いで、以前、エリカにここのバイトを紹介してくれたのであった。
 だが、宮崎と同席していた佐貫という男性に料理をぶっかけてしまい、エリカはレストランをクビになる。
 失意を抱えて帰宅すると、彼女の部屋はゴージャスになっており、麗華がいた。
 麗華はエリカに食事と入浴を済ませたら、扉が現れるので、それで夫の所に行くよう告げる。
 その扉の向こうは見覚えのある墓場で、麗華の夫は禍津であった。
 禍津の用件は、指輪を作るために、彼女の手指の形を見極めることで、彼はエリカに自分の身を自分で守るためにも、眠っている力をひき出す必要があると話す。
 そして、彼女にはクロノスを闇の底から救い出す力があり、そのためには三年の時を待たねばならないと教える。
 エリカが自分の部屋で物思いに耽っていると、携帯電話に宮崎から着信が入る。
 彼は彼女に新しいバイト先を紹介すると言い、彼女は彼の提案に飛びつき、早速、彼のもとに向かう。
 その途中、彼女は竹中が宮崎を脅している場面に遭遇する。
 竹中がナイフを出すのを見て、エリカは宮崎を助けて、その場から逃げ出す。
 しかし、そのことによって、彼女はレストランの客たちの秘密を知ることとなる…」

・「第4話 危険な運命」(「ミステリーボニータ」2010年12月号/単行本A)
「禍津の作った指輪を得て、エリカは自分の運命は自分で切り開くことを決意する。
 また、当初は彼女を追っていた竹中も、あることをきっかけに心変わりをして、彼女のボディガードを務めることとなる。
 彼女の目標は百腕村にある洞窟の奈落にいる魔物「ヘカトンケイル」を倒すこと。
 そのためには百腕村の洞窟に潜入することが必要で、彼女は竹中に、自分を百腕村の連中に20億円と引き換えに渡すことを提案。
 彼女の提案通りにことは進み、彼女は洞窟の奥へ運ばれる。
 魔物の生贄にされる直前、百腕村の連中は腕輪と指輪をつけた両腕を切り落とそうとするが、彼女はそれを避け、地獄穴に身を躍らせる。
 血の底で、彼女は冥界の地獄番、ヘカトンケイルと対決し、これを倒す。
 これでクロノスに会えるかと思った矢先…」

・「第5話 危険な杜」(「ミステリーボニータ」2011年3月号/単行本B)
「エリカは不思議な夢を見る。
 蔦のカーテンを開くと、一面に美しい花の野が広がっていた。
 向こうに見える神殿にはクロノスの姿があり、彼女は彼のもとに駆け寄った時に目が覚める。
 部屋には、夢と同じ花が飾ってあり、禍津によると、この花はデメテルが母なる大地の神、ガイアの要請により「約束の地」に咲かせたものらしい。
 その晩、レストランでのバイトの帰り、彼女は花屋で夢の花と似た花を見かける。
 店員に一本貰い、匂いをかぐと、夢の花と一緒の匂いであった。
 竹中の提案で、エリカは彼のホテルで一休みすると、ついつい眠り込んでしまう。
 彼女は今朝の夢の続きを見ていたが、その身体は夢遊病者のようにホテルから出て、大国神社へ向かう。
 大国神社は社は朽ち果て、苔むした鳥居しか残っておらず、裏ての杜は鬱蒼とした、人気のない場所であった。
 エリカを狙う宮崎は格好の機会だとエリカの後をつける。
 大国神社の鳥居の向こうに潜んでいるものは…?」

・「第6話 危険な遭遇」(「ミステリーボニータ」2011年6月号/単行本B)
「エリカがアパートに帰宅すると、管理人から妹が来ていると告げられる。
 それは倉沢美咲の妹、美里で、薄汚れた身なりでエリカの部屋を物色していた。
 倉沢家はあくどいサラ金業者にだまされ、一家離散に追い込まれただけでなく、姉妹はヤクザに追われていた。
 エリカは倉沢美咲が亡くなり、自分が入れ替わったことを美里に説明する。
 美里はエリかが姉のものを奪ったことを責め、その権利を主張。
 エリカは負い目があるため、美里の負った借金を肩代わりしようと考え、五百万のうちの百万円を用意する。
 美里はヤクザにその金を渡そうとするが、ヤクザは彼女の身体が目的で、拉致されそうになる。
 そこに現れたのが、謎の男、冥基(くらもと)であった。
 その晩、エリカの携帯電話に美里から着信があり、助けを求められる。
 エリカは残りの四百万を用意して、指定された場所に向かうのだが…」

・「第7話 危険な願望」(「ミステリーボニータ」2011年9月号/単行本C)
「ヘカトンケイルの次に現れたエキドナという魔物。
 これを倒さねば、エリカの身の周りに平穏は訪れそうにない。
 ある日、レストランにイケメンの男性が現れ、彼女にデートを申し込む。
 彼の名は宮微愛都(くび・あいと)で、エリカは仕事中だと断るも、彼にクロノスに近い雰囲気を感じる。
 アパートに帰宅すると、倉沢美里が彼女を待ち受けていた。
 美里は住む場所がなく、エリカにもらった金も使い果たしたため、一緒に住まわしてほしいと頼む。
 仕方なくエリカは自分は麗華が用意した部屋に行き、美里をアパートの部屋に住ます。
 しかし、美里はエリカにますます不審と嫉妬を抱き、エリカの腕輪と指輪に目を付けるようになる。
 そこへ目を付けたのがまたもや冥基。
 彼の正体は冥界の王であり、エリカの命を狙っていた。
 ある晩、バイト帰りのエリカは何者かの襲撃を受ける。
 竹中とその仲間が身体を張って、彼女を守るが、自分の知り合いが傷ついたことにエリカはショックを隠せない。
 その時、宮微愛都が現れ、エリカに「すばらしく力のつく飲み物」といってアンプルを差し出す。
 だが、彼女は今までのことで人間不信に陥っており、それを払いのけて割ってしまう。
 エリカはエキドナを倒すことを決意し、竹中たちに相談したところ、ちょうと百腕村から竹中たちにエリカの件で依頼が来る。
 その依頼はエリカを地獄穴のエキドナに捧げることで、竹中は、エリカに危害を加えぬことと地獄穴の淵まで自分たちを同行させることを条件にこれを飲む。
 エリカは地獄穴の底でエキドナに戦いを挑むのだが…」

・「第8話 危険な願望」(「ミステリーボニータ」2011年12月号/単行本C)
「ある夜、バイトから帰ると、エリカの寝室の奥に不思議な扉が現われていた。
 この扉は禍津の家のある墓場に通じており、エリカは禍津から泳げるようになる指輪をもらう。
 禍津のもとを辞去した後、彼女はそこから遠くない自宅へと向かう。
 別れ離れになってからずっと彼女は家族のことが気がかりであった。
 だが、家のあった場所は森になっていて、家は影も形もない。
 しかも、彼女は帰宅する手段がなく、雪までも降り出してくる。
 途方に暮れた彼女の前に宮微愛都が現れ、彼女を彼の別荘に連れて行く。
 彼女はある部屋をあてがわれるが、宮微に部屋から出ないよう忠告される。
 と言うのも、今晩、彼は人妻の愛人と密会する約束があるからであった。
 翌朝、エリカが目覚めると、窓の外から女の子の泣き声が聞こえてくる。
 女の子はいなくなった母親を捜して、迷子になったらしい。
 エリカが女の子を連れて、町をさまよっていると、その子の母親が通りを走ってくる。
 エリカはその家に招かれるが、そこで予想外の事実に直面することとなる…」

・「第9話 危険な海」(「ミステリーボニータ」2012年3月号/単行本D)
「次々と意外な事実が明らかとなり、エリカはすっかり気が抜けてしまう。
 バイトへの出勤途中もいろいろと考え事をしていると、何者かにバッグをひったくられる。
 そのバッグには泳げるようになる指輪が入っていた。
 ひったくりを追うと、そこは大国神社で、鳥居の向こうには冥基が待っていた。
 エリカはバッグを奪った妖魔を倒すも、足元に大きな穴が開いていた。
 落ちた先は冥界の海で、彼女は指輪を取り戻そうとするが、うまくいかない。
 更に、彼女の周囲には海魔が迫り、海に引きずり込まれた彼女の前に海王がその姿を垣間見せる。
 エリカがこの危機をくぐり抜ける方法は…?」

・「第10話 危険な覚醒」(「ミステリーボニータ」2012年6月号/単行本D)
「エリカは海王の力を手に入れるも、うまくコントロールができない。
 ある夜、彼女のアパートが襲撃を受け、放火される。
 彼女が火を消そうとしたところ、大量の水が溢れ、このままでは町が水没してしまう。
 慌てた彼女の前に冥基が現れ、水を抑える代わりに自分と一緒に来るよう提案する。
 彼女は提案を受け入れ、洪水を抑えた後、冥基に彼女の力を封じる檻へと入れられる。
 彼女が巨大な虫に襲われそうになった時、竜に乗った男性が檻を破って現れ、彼女を助けてくれる。
 その男は戦神、亜礼清(アレス)で、彼女を海王のもとに彼女を運ぶ。
 亜礼清は麗華に横恋慕をしており、彼女の歓心を買おうとしたのであった。
 海王によって彼女は元の世界に戻るが、その頃、百腕村でまた新たな動きが…」

・「第11話 危険な降臨」(「ミステリーボニータ」2012年9月号/単行本E)
「約束の三年目まであとわずか。
 クロノスとエリカはその日が待ち遠しくてたまらない。
 特に、クロノスは悠久の時を冥界で過ごしてきたため、エリカへの想いは頂点に達していた。
 クロノスは麗華の身体を借り、エリカに会いに来るも、麗華や宮微愛都はそれを危険視するようになる。
 一方、天界でもクロノスの復活は危惧されていた。
 クロノスの力はあまりに強大で、もしも解放されたら、ゼウスの力をもってしても抑えることができない。
 ガイアはエリカにクロノスの力を抑えることができるとゼウスを説得するも、彼は納得せず、エリカの抹殺を目論む。
 彼は、ある海岸に遊びに来ていたエリカに雷を落とすのだが…」

・「第12話 危険な降臨」(「ミステリーボニータ」2012年12月号/単行本E)
「明日はエリカの19歳の誕生日。
 三年目の明日、クロノスは解放され、彼女は彼と共にガイアの約束の地に行けるはずであった。
 しかし、クロノスの力が彼自身にさえも制御不可能なレベルに達してしまったため、彼の解放は非常に危険なこととなる。
 それでも、宮微愛都はエリカに自分の信じる道を行くよう励まし、翌日、19歳になったエリカは「新たな苦難」に立ち向かうことを決意する。
 亜礼清の竜に乗り、彼女は百腕村の地獄穴に向かうが、ゼウスはまたもや彼女に雷を落とし、妨害する。
 ひどい火傷を負いながらも、エリカはクロノスのもとに向かおうとするが…」

・「第13話 危険な解放」(「ミステリーボニータ」2013年3月号/単行本F)
「クロノスと会うため、エリカは地獄穴で無数の魔物と戦う。
 彼女には強力な武器があったが、多勢に無勢、身体に幾つか傷を受ける。
 その時、クロノスの力が発動し、彼女は遥かな過去へと飛ばされてしまう。
 その時代、彼女はクロノスに庭に住む花の妖精であった。
 彼女が死んだ後、クロノスは彼女の魂をイアリングにして、神々との戦いに敗れ、冥界の底に降りる時もそれを大事に持ち続ける。
 そんな彼にガイアが彼女の魂にいつか救い手となる少女の身体を与えると提案する。
 そして、エリカがこの世に生まれ、19歳となった時に彼の救い手になるが、それには二人の想いが強固に結びついている必要があった。
 過去を垣間見た後、エリカは誕生日の前日に戻ってくる。
 だが、事態は更に悪化していた。
 もしも再度クロノスの力が彼女の身体を通して行使されれば、この世界は破壊されてしまう。
 更に、クロノスが解放されても、同様のことが起こると言われていた。
 それを避けるには一つしか選択肢はない。
 ある決意を胸に秘め、彼女は冥界へと向かう…」

・「第14話 危険な解放」(「ミステリーボニータ」2013年3月号/単行本F)
「エリカが目覚めると、そこはガイアの約束の野。
 そして、彼女の前にクロノスが姿を現わす。
 二人はそこで幸せな日々を送るが、エリカは時々、実感がわかず、途方に暮れる。
 また、たまに心が張り裂けそうになるほどの苦しみや悲しみが甦るが、過去のことは記憶が曖昧であった。
 エリカとクロノスの間に起こったこととは…?」

 三年もの間、描き続けられた力作です。
 ギリシア神話をモチーフにしてはおりますが、そこは高階良子流に料理され、タイム・スリップ、バトルものと様々な要素が混在した、壮大な「ハーレクイン」となっております。
 個人的なお気に入りは、最初は敵だったのに、後半、エリカの信奉者となる竹中の一派。
 冷酷無慈悲なヤクザ・キャラだったのに、一転して義理深く親切になり、そのギャップが味わい深いです。
 あと、エリカの勤めていたレストランのその後が気になります。

2024年2月19〜25日 ページ作成・執筆

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